(88)『古事記』神武天皇、熊野に到着する・石上神宮・夢のお告げ

石上神宮(奈良県)

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前回までのあらすじ

天下を治めるために東に向かった「イツセ(五瀬命)」と「イハレビコ(神武天皇)」一行は大和地方の豪族の攻撃に遭いました。

そこで「イツセ」は負傷し、亡くなります。

自分たちは太陽神の子なのに、日に向かって戦ったことが良くなかった

と理由づけをし、

イワレビコ」一行は南に向かうことにしました。

「古事記」における、熊野上陸

(「イツセ」が亡くなったので、これ以降は「イハレビコ(神武天皇)」が単独で指揮を執ることになります。)

南に進んだ「イワレビコ(神武天皇)」一行は熊野に着きます。

そこへ大きな熊が現れ、姿を消しました。

すると一行が皆、意識を失い伏せってしまいました。

全滅か、と思われた時、熊野の「タカクラジ(高倉下)」が太刀を持って訪ねてきて、その太刀で悪き神の息吹を祓うと「イワレビコ」が目覚め

イワレビコ
長く寝ていたものだ

と言いました。

イワレビコ」がその太刀を受け取ると、熊野の荒ぶる神々は逃げ兵士たちも皆、目覚めました。

イワレビコ」が「タカクラジ」に太刀を手に入れた経緯を尋ねると、「タカクラジ」は自分が見た夢の話しをしました。

タカクラジ
アマテラス(天照大御神)」と
タカミムスビ(高御産巣日神)」が
タケミカヅチ(建御雷神)」を呼んで言いました。

葦原中国(地上のこと)が酷く騒がしい。
わが御子たちが苦しんでるようだ。
お前が治めた国(大国主命に国を譲らせた)だからお前が降臨して御子を助けてあげて!

すると「タケミカヅチ」は
自分が下らなくても、あの国を平定した太刀があるので、その刀を下ろしましょう。

と言い、私(タカクラジ)に向かって、
倉の屋根に穴を開けて落とし入れるから、その刀を天津神の御子に献上しなさい。
と、言いました。

翌朝、倉を見ると本当にその太刀があったので(「イワレビコ」に)献上したのです。

この刀の名は「佐士布都神(サジフツノカミ)」または

甕布都神(ミカフツノカミ)」または

布都御魂(フツノミタマ)」といい、

石上神宮(イソノカミジングウ)」にあります。

石上神宮と「布都御魂(フツノミタマ)」について

布都御魂(フツノミタマ)」は「イワレビコ」の大和征服に大いに役立った後

神武天皇」の世では「ウマシマジマノミコト(宇摩志麻治命)」が宮中で祀りました。

ウマシマジマノミコト(宇摩志麻治命)」は物部氏穂積氏らの祖と言われる人物です。

古事記」では少し後に登場するのでその時に詳しく説明します。

第10代崇神天皇」の時、

物部氏の「イカガシコオノミコト(伊香色雄命)」によって

石上神宮」に移され御神体となりました。

石上神宮の鳥居「布都御魂大神」の文字

はるさん的補足 夢のお告げ

これまでに「古事記」では神託を知るために

鹿の骨での太占」をしたり、

アメノコヤネ(天児屋命)」をはじめとする神霊に憑依できる神が登場して来ました。

今回は「夢のお告げ」です。

古今東西、夢というものは「何かのお告げや啓示」や「潜在意識・深層心理」などを知ることができるものと思われてきました。

日本も例外ではなく「古事記」には夢のお告げによって、

天意を聞く場面が今後も出てきます。

例えば「第10代崇神天皇」の箇所にも、

夢に「オオモノヌシ(大物主神)」が現れ疫病退散のアドバイスをくれます。

神武天皇」は「崇神天皇」と同一視されることがあると(86)の記事に書きました。

今回の「一行が皆、意識を失い伏せってしまいました」という文を疫病流行と捉えることもできるのでこのエピソードもお二人が同一視される根拠となりますね。

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「大物主神」を祭神とする「大神(オオミワ)神社」(奈良県)

古事記の他の記事

古事記の他の記事はこちらからご覧ください。

上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇)

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