「石英 quartz」というのは二酸化珪素が結晶してできた鉱物のことです。
アメジスト、ローズクォーツ、クリソプレーズ、オニキス、サードニクス、タイガーズアイ、、、
これらの鉱物名は全て石英。
鉱物は成分と結晶の仕方によって鉱物名が決まります。
ですから、透明の水晶と力強い感じのタイガーズアイなど、見た目はかなり違いますが同じ鉱物になります。
結晶とは原子が規則正しく並んだ物のことです。
石英グループの分類は曖昧で複雑で少しテキトー。
それは石英グループだと分かる前に、昔から流通していた石が多く、商品名が有名になっていることや
同じ塊の中に、縞模様がある面とない面があったりするから宝石屋さんの主観で分類されるファジーな側面があるから。
この記事では石英グループに属する石たちの鉱物学的の大まかな分類と宝石の種類を紹介したいと思います。
石英の分類 大きく分けると2種類
石英という鉱物名の宝石はたくさんあります。
まずは結晶の大きさによって大きく2種類に分けられます。
しかし、何ミリとかという具体的な基準はありません。
① 顕晶質の物
特徴
・構造が目に見える大きさで結晶したもの
・隙間なく結晶が詰まっている
・1つの結晶が成長した物 (単結晶)
② 潜晶質の物
特徴
・目に見えない小さな結晶が集まった物
・ミクロの結晶が粒々状に集合しているので染色しやすい
・多数の結晶の集合体 (多結晶)
① 顕晶質の物について 鉱物学的分類と一般表示
顕晶質の物も潜晶質の物も鉱物名は石英ですが、石英といった場合、顕晶質の物を指すことが多いようです。
鉱物学的、石英と水晶の区別
鉱物学的には目に見える大きさの結晶の物を水晶と呼ぶことになっています。
スモーキークォーツ(煙水晶)を例に説明します。
上の写真はいずれもスモーキークォーツの原石です。
左の写真は結晶の形を残すことができず、塊となっている物 (他形結晶といいます) で鉱物学的には水晶とは呼ばず石英といいます。
右は六角形に成長した目に見える大きさの結晶 (自形結晶といいます) なので水晶と呼びます。
一般的な石英と水晶の区別
一般的には
・透明度の高い物を水晶
・透明度の低い物を石英
と呼ぶようです。
しかし、わたし達が石屋さんなどで見る場合、原石を見ることはあまりなく、全て「水晶」という名前で売られていると思います。
顕晶質の石英(水晶)の種類
・シトリン
などがあります。
② 潜晶質の物について 一般的分類
潜晶質の石英も鉱物名は「石英」ですが、カルセドニー(玉髄)と呼ばれます。
カルセドニーは透明度によって主に3つに分類されます。
カルセドニーの一般的な分類
カルセドニーは紀元前から多くの流通名がつけられていますが
・半透明で模様のある物をアゲート(メノウ)
( 平行な縞模様があるアゲートをオニキスとよぶ)
・不透明で模様があるものをジャスパー(碧玉)
と分類します。
実際には、、、
ただし、天然の鉱物は同じ名前の物でも、半透明か不透明か個体差があります。
・カルセドニーともジャスパーとも分類される石もある
上の写真はいずれもカーネリアンです。
和名は紅玉髄ですが、右のカーネリアンは不透明にも見えますね。
ですからジャスパーとされていることもあります。
分類の仕方が曖昧なのでこのようなケースは見受けられます。
・全てのオニキスに縞模様があるわけではない
上の写真はオニキスです。
本来オニキスは平行な縞模様があるアゲートを指しますが、縞模様がなくても黒いカルセドニーならオニキスとしていることも多く見られます。
・流通名(商品名)が有名で分類もされないような物
タイガーズアイなどは縞模様があるのでオニキスの仲間なのかもしれませんが、オニキスと呼ばれることはまずないでしょう。
このように、流通名が有名になり個性的な石の場合は敢えて分類せず「カルセドニーの一種」という言われ方 (鉱物名は石英) になります。
潜晶質に石の総称カルセドニー宝石たち
既述した通りカルセドニーの分類は曖昧です。
しかし、比較的明確に分類されている物を紹介します。
カルセドニー (アゲートでもジャスパーでもない a の部分)の宝石
総称のカルセドニーではなく、上のベン図のaの部分で有名な宝石は
などがあります。
アゲート ( bの部分)の宝石
カルセドニーの中で半透明で模様のある物がアゲートです。
オニキスを除くアゲートには
・いわゆるメノウとよばれる年輪のような模様のアゲート
などがあります。
オニキス ( cの部分)の宝石
アゲートの中で、平行に線が入って物がオニキスです。
オニキスと呼ばれるのは
・オニキス (オニキスといった場合、黒を指します)
があります。
ジャスパー ( dの部分)の宝石
カルセドニーの中で不透明で模様がある物がジャスパーです。
ジャスパーと呼ばれる宝石には
などがあります。
石英グループだけど顕晶質でも潜晶質でもないオパール
オパールは石英グループではありますが、結晶していない準鉱物です。
石英グループに属する天然ガラスです。
オパールは低い温度のところでできるため、二酸化珪素は結晶することができず、二酸化珪素の粒々が規則正しく水を含んだ状態で並んで固まった鉱物です。
オパールは石英グループに属しますが、(準)鉱物名はオパールです。
石英のかけらが細かい砂になり再び固まったクォーツァイト
石英が風化して細かな砂となり、地殻変動の熱や圧力などで変成作用を受けて二次的に固まった岩を珪岩(クォーツァイト)と呼びます。
クォーツァイトが作られる過程で、ヘマタイトやフックサイトを内包しながら再び結晶した物をアベンチュリン(砂金石)と呼びます。
石英から生まれた生まれた「石英グループ」の仲間ではありますが結晶の仕方が独特ですね。
クォーツァイトも鉱物名は石英になります。
「石英グループ」の宝石の硬度
石英グループのモース硬度は基本的には「7」です。
ただし、穴が空いたメノウは 6.5〜7
水分を含んだオパールは5〜6.5
になります。
💎参考記事
「石英グループ」の宝石の光沢
石英グループの光沢は基本的にガラス光沢です。
💎参考記事
終わりに
二酸化珪素は地殻の約75%を占める成分です。
日本を含む世界中から石英グループの宝石たちは見つかります。
そのため古代から人類は石英グループの宝石たちを護符にしたり、アクセサリーにしたり、時には飲んでみたりして親しんできました。
そのため、通称や商品名が多くありわかりにくい面もあります。
しかし、何となく鉱物学的な分類が頭に入っていればどんな石か理解するのに役立つかもしれません。
もし宝石の面白さを感じる手助けが出来たなら幸いです。