[自色]の宝石と[他色]の宝石〜『色の原因となる元素』は構成している主要な元素か
「自色」の宝石、トルコ石のブローチ

たくさんの色の宝石があります。

宝石の色の多くは、 含まれる元素 によって発色しています。

色の原因となる元素が結晶を構成する主要な元素の場合を「自色(ジショク)」

色の原因になる元素が、結晶を構成する主要な元素ではなく、 不純物として存在する場合を「他色(タショク)」といい、殆どの色のついた宝石は他色です。

自色の宝石

ペリドット

自色」は、その物質を構成している主要な元素が原因となった発色です。

その宝石の化学式に発色原因となる元素が入っています

主な自色の宝石

宝石を作る主な元素記号

O 酸素、Si ケイ素、Al アルミニウム、Fe 鉄、Ca カルシウム、Na ナトリウム、K カリウム、Mg マグネシウム、Ti チタン、H 水素

主な自色の宝石は

アルマンディン・ガーネット Fe3Al2(SiO4)3

スペサルティン・ガーネット Mn3Al2(SiO4)3

トルコ石 CuAl6(PO4)4(OH)8 · 4H2O

マラカイト (孔雀石) Cu2(OH)2CO3

ペリドット (Fe,Mg)2SiO4

です。

化学式で説明すると、、

アルマンディン・ガーネットの場合

アルマンディン・ガーネットの化学式は

Fe3Al2(SiO4)3

アルマンディン ・ ガーネットは結晶の構成元素の1つであるにより赤色に発色しています。

スペサルティン・ガーネットの場合

スペサルティン・ガーネットの化学式は

Mn3Al2(SiO4)3

スペサルティン・ガーネットは結晶の構成元素の1つであるマンガンによりオレンジ色に発色しています。

ガーネットは自色の物が多い宝石ですが、

例えばパイロープガーネットに不純物のクロムが入ると赤みが増す

など、自色と他色を複合した宝石もあります。

トルコ石の場合

トルコ石の化学式は

CuAl6(PO4)4(OH)8 · 4H2O

トルコ石は結晶の構成元素の1つであるにより青く発色しています。

マラカイトの場合

マラカイトの化学式は

Cu2(CO3)(OH)2

マラカイトは結晶の構成元素の1つであるにより緑色に発色しています。

ペリドットの場合

ペリドットの化学式は

(Fe,Mg)2SiO4

ペリドットは構成元素の1つであるにより緑色に発色しています。

はる
このように、同じ元素であっても結晶構造や他の元素との兼ね合いによって発色する色は変わります。
例えば鉄は、
ガーネットでは赤い色、
ペリドットでは緑色、
アメジスト(他色)では紫色、イエローサファイア(他色)では黄色の原因になります。

同じ元素でも主要構成元素にも不純物にもなる

同じ元素でも鉱物によって主要構成元素にも不純物にもなります。

例えば

鉄はアルマンディン・ガーネットやペリドットの主要構成元素ですが、アメジストサファイアの場合は不純物になります。

銅はマラカイトトルコ石の主要構成元素ですが、パライバトルマリンスミソナイトの場合は不純物となります。

他色の宝石

サファイアも他色の石です

他色」とはその物質を構成している主要な元素ではなく、不純物として含まれている微量元素による発色のことです。

色石の多くは他色です。

その宝石の化学式に発色原因となる元素が入っていません

宝石に色を与える主な元素

発色原因となる元素は主に以下の8つの元素です。

Ti チタン、V バナジウム、Cr クロム、Mn マンガン、Fe 鉄、Co コバルト、Ni ニッケル、Cu 銅

主な他色の宝石

コランダム (ルビーやサファイア) Al2O3

ルビーやサファイアなどのコランダムという鉱物は酸化アルミニウムの結晶です。

純粋なコランダムは無色透明で、例えばそこに不純物であるクロムが入るとルビー、鉄とチタンが入ると青いサファイアになります。

しかしクロムや鉄は結晶の構成物質ではありません。

全ての色のコランダムの化学式はAl2O3です。

・コランダム➕クロム 

クロムの含有量によってルビーまたはピンクサファイア

・コランダム➕ニッケル

イエローサファイア

・コランダム➕鉄、チタン

ブルーサファイア

・コランダム➕バナジウム

パープル(バイオレット)サファイア

・コランダム➕クロムとニッケル

パパラチアサファイア

・コランダム➕コバルト

グリーンサファイア

水晶 SiO2

水晶は二酸化ケイ素の結晶です。

そこに不純物として鉄が入るとアメジストなどになりますが、鉄は構成物質ではありません。

全ての色の水晶の化学式はSiO2です。

・水晶➕

アメジストシトリンアメトリン

・水晶➕アルミニウム

スモーキークオーツ

・水晶➕チタン

ローズクオーツ

トルマリン(リシア電気石) Na(Li,Al)3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4

トルマリンの宝石の多くはリシア電気石という種類に分類されます。

リシア電気石はナトリウム、リチウム、アルミニウム、ホウ化ケイ素を含む鉱物です。

純粋なリシア電気石は無色です。

不純物が入ることにより様々な色に変化します。

全てのリシア電気石の化学式はNa(Li,Al)3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4

です。

・トルマリン➕

インディゴライト

・トルマリン➕マンガン

ルベライト

・トルマリン➕

パライバトルマリン

ベリル Be3Al2Si6O18

イエローベリル

ベリルはベリリウムやアルミニウムを含む鉱物です。

純粋なベリルは無色透明です。

不純物が入ることで様々な宝石になります。

全てのベリルの化学式はBe3Al2Si6O18 です。

・ベリル➕クロム

エメラルド

・ベリル➕

アクアマリン、イエローベリル

・ベリル➕マンガン、セシウム

モルガナイト

・ベリル➕マンガン

レッドベリル

ダイヤモンド C

ダイヤモンドも純粋な物は無色透明です。

不純物が入るとカラーダイヤモンドに変化しますがまだまだわからないことが多いです。

・ダイヤモンド➕ホウ素

ブルーダイヤモンド

・ダイヤモンド➕窒素

グリーンダイヤモンド

・ダイヤモンド➕鉄、グラファイト

ブラックダイヤモンド

「自色」と「他色」の大きな違い

自色と他色の一番の違いはカラーバリエーションです。

自色の鉱物は石自体に色が付いているのでバリエーションに制限があります。

他色の鉱物は着色原因となる元素が結晶構造とは関係がないので、 同じ鉱物であっても異なる元素が含まれることがあり

カラーバリエーションが豊かになります。

元素記号などが多く出てきて拒否反応が出た方もいらっしゃると思います。

でも宝石の構成元素や化学式を知りたい人、発色原因を知りたい人には面白いお話しだったのではないでしょうか。

楽しんでいただけたなら嬉しいです!

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