(159)『古事記』市辺之忍歯王を殺害 意祁王と袁祁王の逃亡
鹿狩りに誘われて、、、

これまでのあらすじ

允恭天皇が亡くなると、皇位継承者だと思われていた軽太子が同母妹と心中

そこで第20代安康天皇が即位しましたが、誤解から生まれた悲劇によって目弱王(マヨワオウ)に殺害されます

安康天皇が殺害されたことを、あまり怒らなかったという理由をつけて大長谷王(後の雄略天皇)

兄の黒日子王(クロヒコノミコ)と白日子王(シロヒコノミコ)を殺害しました。

これにより、大長谷王の兄弟が全員死亡し、第19代・允恭天皇直系の御子は大長谷王のみとなりました。

大長谷王、市辺之忍歯王を殺害

この記事に関連する皇族方

しかし、亡き父(允恭天皇)の兄、

履中天皇の御子である市辺之忍歯王(イチノヘノオシハノミコ)がいたため、

大長谷王 (後の雄略天皇) は即位することができないでいました。

ある時、近江の国佐々紀山君(ササキノヤマノキミ)の祖先の韓帒(カラフクロ)という人が、

韓帒
近江の久多綿(クタワタ)
蚊屋野( カヤノ 現在の滋賀県蒲生郡日野町鎌掛付近?) に
猪や鹿が沢山います。

その立つ脚は、ヨモギの原と見紛うほど、
頭上に戴く角はあたかも枯れ松の姿のようでございます。

と申しました。

そこで大長谷王市辺之忍歯王を誘って近江にいらっしゃいました。

そして、その野にお着きになったところで、めいめい別々に仮宮を作って宿泊なさいました。

🍃

翌朝、まだ日も出ない時間に市辺之忍歯王は、いつもの平常な気持ちで、

馬に乗ったまま大長谷王の仮宮の脇まで来てお立ちになり、

大長谷王のお供の人

市辺之忍歯王
大長谷王はまだお目覚めでなくいらっしゃるのか。
早く申し上げるがよい。
夜はもう明けている。
狩り場にお出かけください。

とおっしゃって、馬を進めて行かれました。

この時、大長谷王のお供の人たちが

大長谷王のお供たち
市辺之忍歯王は尋常でない物の言い方をする御子でいらっしゃいます。
(悪いことを企んでいるかもしれないので)
しっかりとご自身の護りを固めてください。

と忠告しました。

市辺之忍歯王が早朝に狩りに行こうと言ったので

大長谷王を殺すつもりだと思ったのです。

そこで大長谷王は、衣の中に鎧をお召しになって、弓を手に、矢を身につけて

馬に乗って出て行き、すぐに市辺之忍歯王に追いつき、

馬上で並び、矢を抜いて市辺之忍歯王を射落としました。

そして体をきりきざみ、馬の飼い葉桶に入れ、塚(古墳のようなお墓)を作らず、地面と同じ高さにお埋めになりました。

飼い葉桶

当時の皇子の墓は封土を築く物でした。

したがって、

市辺之忍歯王を卑しめる処遇をしたことを表しています。

🍃

後に天皇となった市辺之忍歯王の息子の袁祁王(ヲケノミコ)が骨掘り起こして、

近江の市辺町に御陵を作りました。

市辺之忍歯王の御子たち

この時、市辺之忍歯王の御子たちの意祁王(オケノミコ)袁祁王(ヲケノミコ)はこの事変を聞いて逃亡しました。

そして2人は山城国の刈羽井(カリハイ)に行き、持参したお食事を摂っていました。

すると、顔面に入れ墨をした老人が来て、その食べ物を奪いました。

2人の御子たちは

意祁王と袁祁王
食べ物は惜しくありません。
でもあなたはどなたですか。

とおっしゃいました。

老人は

老人
私は山城の猪飼いです。

と言いました。

このエピソードはお2人の悲惨な逃亡を示すもので、

猪飼いはその後は登場しません。

それから2人の王子は、淀川の楠葉の渡(クスハノワタリ)を舟で逃げ切り、播磨国にお着きになりました。

播磨国志自牟(シジム)という豪族の家にお入りになって、身分を隠して馬飼いや牛飼いとして使われて過ごしていました。

意祁王(オケノミコ)袁祁王(ヲケノミコ)兄弟は

後に

弟の袁祁王第23代顕宗天皇

兄の意祁王第24代仁賢天皇になります。

はるさん的補足 市辺之忍歯王が卑しめられた理由

古事記」では市辺之忍歯王の態度に不信感を感じた大長谷王の供の者が、

大長谷王に忠告したことになっています。

そしてあくまで自分の身を守るために先手を打ったように描かれています。

市辺之忍歯王が本当に大長谷王暗殺するつもりだったのか

ただ狩りをしたかっただけかはわかりません。

🍃

前回の記事 (158) 終わらない悲劇 允恭天皇の御子たちの殺し合い

都夫良意美 (ツブラオミ 葛城円) が亡くなりました。

それを持って葛城氏の勢力は著しく低下しました。

市辺之忍歯王の母は葛城氏出身の黒日売(クロヒメ)です。

市辺之忍歯王葛城氏の巻き返しを狙って大長谷王を殺そうとしたとも考えられます。

(大長谷王葛城円の娘と結婚しているのですが、、、)

少なくとも大長谷王が「命を狙われている」と感じたとしても不思議はありません。

ですから市辺之忍歯王を酷い殺し方で殺し、

卑しめるような墓を作ったのではないかと思われます。

この市辺之忍歯王殺害後、平群(ヘグリ) や大伴 (オオトモ) 、物部 (モノノベ) 氏が有力豪族として朝廷内で台頭してくることになります。

古事記の他の記事

古事記の他の記事はこちらからご覧ください。

上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇 未完)

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