(120)『古事記』日本神話タロット剱ノ10−①日本武尊の慢心と思国歌
剱ノ拾 (ソード10) 「白鳥」

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日本神話タロット「剱ノ拾」は「古事記」の長い範囲を一枚にまとめています。

記事がとても長くなってしまうため、(121)と2回に分けることにします。

これまでのあらすじ

日本武尊景行天皇東征を命じられ、戦い続けましたが、ようやく帰途につきます。

そして尾張国では美夜受比売(ミヤズヒメ)と結婚しました。

伊吹山の神の祟りと都を目指す日本武尊

オールカラー地図と写真でよくわかる!古事記」(西東社)p145

伊吹山

結婚なさった日本武尊は、いつも身に着けていた草薙の剣(別名:アメノムラクモ)美夜受比売のもとに置いて

ヤマトタケル
この山の神なら素手でも殺せるであろう

と言って、伊吹山の神を征伐しに出かけます。

山を登って行く時に山の曲がり角で、牛のように大きい白いに出会いました。

日本武尊は声高に

ヤマトタケル
この白い猪は山の神の使いだ。
今殺さなくても戻る時に殺せばいいだろう。

と仰って山を登って行きました。

しかし、そのは神の使いではなく、山の神の正体だったのです。

この子を巨大にした感じ?「山の神」

侮辱され、怒った山の神は激しく雹(ヒョウ)を降らせたので、日本武尊は意識が朦朧となってしまいました。

居寤(イサメ)の清水

なんとか山から降り、玉倉部の清水にたどり着き、意識が戻ります。

そのため、その地を居寤(イサメ)の清水といいます。

当芸野(タギノ)

玉倉部をお発ちになり、当芸野にお着きになった時

ヤマトタケル
私の心はいつもずっと自由に鳥のように飛んで行くことができた。
ところが、今私の足は思うように歩けない。
タギタギしくなってしまった。

と仰ったので、その地を当芸野(タギノ)というようになりました。

杖衝坂(ツエツキザカ)

そこから少し歩いただけでも、とてもお疲れになってしまったので杖をつき、ノロノロと歩きました。

そこでその場所を杖衝坂といいます。

尾津崎(オツノサキ)

それから尾津崎(オツノサキ)(現在の三重県桑名市あたり)の一本松の下に着きます。

すると東征に行く途中でここを通り、食事をした時にお忘れになった剣がまだそこにありました。

そこで、日本武尊

ヤマトタケル
尾張国に 真っ直ぐ向かい合っている
尾津崎の一本松よ
おまえが人であったなら
太刀を帯させ 着物を着せてやったのに
一本松よ

と歌いました。

三重

それから近くの村にお着きになった時に

ヤマトタケル
私の足は、まめ、タコ、むくみで三重の曲がり餅のようになって、酷く疲れてしまったよ。

と仰ったのでその地を三重と名付けました。

能煩野(ノボノ)

そして能煩野(ノボノ)にお着きになった時に、故郷を思って思国歌 (クニシノビウタ)を詠みます。

ヤマトタケル
倭(ヤマト)は 国のまほろば
たたなづく 青垣
山隠(ヤマゴモ)れる 倭し 麗し

意味:倭は国の最も秀でたところ
重なりあっている山々の青い垣
山々に囲まれた倭は素晴らしい

(121)に続く

日本神話タロット 極参 剱ノ拾(ソード10)「白鳥」

剱ノ拾(ソード10)の意味

正位置

破滅、決別、災難、低迷

逆位置

希望が生まれる、再起、運気の上昇

解説文写し

ミヤズヒメと結婚したヤマトタケルは、伊吹山の神を倒しに行きます。

そこまで無敗だったため油断し、草薙の剣ミヤズヒメに預けたまま入山します。

白い大猪を見つけますが

「神の使者だろうから帰りにでも殺すか。」

と言いました。

実はその自体が伊吹山の神で、怒ってを降らせました。

ヤマトタケルは怪我を負うものの、かろうじて下山しましたが、そのまま病に伏せて死んでしまいました。

その後ヤマトタケル白鳥となり各地を回り、後に天へと登りました。

参考記事

日本神話タロット「極参」

はるさん的補足 神話の英雄と代名詞的武器

日本武尊が亡くなる原因の一つと考えられるのが、東征を共にした草薙の剣美夜受比売のところに置いていったことです。

新婚の美夜受比売にいいところを見せたかったんでしょうか。慢心でした。

日本武尊にとって草薙の剣は重要なアイテムでした。

このように、自分の代名詞ともいうべき武器を持つ神や英雄は少なくありません。

インド神話インドラヴァジュラ(金剛杵)で怪物を退治します。

ヴァジュラ

ギリシャ神話ゼウスで戦います。

北欧神話オーディンであればグングニルです。

イギリスの伝説の英雄アーサー王聖剣エクスカリバーを持ちます。彼はエクスカリバーを岩から抜いて、周囲に正当な王だと認めさせ、亡くなるときには湖に剣を投げ込ませました。

すぐれた武器を持つということは、それを使いこなす能力があり、持つにふさわしい資質があるということでしょう。

だからこそ、その武器を失ったときが英雄の最期となるのかもしれません。

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中巻(神武天皇から応神天皇)

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コメント一覧
  1. こんにちは。ヤマトタケルの最期・・ついにこの時が来てしまいました(;_;)
    まさしく「油断大敵」という感じですが、満身創痍という点はまさに「剣の10」ですね。(「慢心」創痍?(^_^;)
    こちらのタロットだと白い猪〜雹に白鳥まで全部が入っているんですね。
    それにしてもはるさん、四日市や桑名にも出向かれているんですか!すごいですほんっとうに!!
    三重大学とかで普通に講師出来そう。
    大和は国のまほろばの歌はこれだったんですね。この辺りは本当に、特に密度の濃いエピソードです。

    それにしても強さや立場など、色々なものを持てば持つほど、油断をするとそれはもう大ダメージに直結するのだなと。
    その点は本当に心しないといけないだろうな、と心からそう思います。

    英雄の代名詞的武器とか、そういう設定は大好きです(^_^)男はいつまで経っても男の子というか中二病というか。
    ドラクエでいえば「ロトのつるぎ」、ワグナーのニーベルングの指環ではノートゥングでしょうか。(ワグナーのオペラの元祖中二病な設定たち本当好きです

    ヴァジュラ(金剛杵)は仏教の密教・真言宗系でも使われたりしますね。

    • ありがとうございます♪
      正に油断大敵ですね。
      ソード10にふさわしい満身創痍。
      地図で見ると、あとちょっとだったのに、、、と涙が出ます。
      息子と杖衝坂に行きました。
      急斜面で、怪我などしていなくても歩くのが大変でした。
      でも民家がいっぱいありました!
      英雄と武器、面白いですよね。
      それを使いこなすのが英雄たる由縁ですね。
      ワーグナーのオペラ大好きです。
      ヴァジュラは仏教の物だと思っていました。

  2. 伊吹山のお話はよく知り得ています。然りながら分かり易いです。
    猪への暴言はいけませんね、やはり連戦連勝にて慢心されての事ですね。
    玉倉部の清水の傍には関ケ原鍾乳洞は御座います。
    ヤマトタケルさまとは縁も所縁も御座いません
    玉倉部には清水を使用する美味しいお蕎麦屋さんも点在します
    古のロマンを感じる原風景の様な処です。

    • ありがとうございます
      新婚ボケでしょうか、と思うような慢心ですね。
      残念です。
      地図で見ると、本当にあと少しだったことがわかります。
      いつか、伊吹山や玉倉部の辺りにも行ってみたいです。お蕎麦も食べたい。
      古のロマン、感じてみたいです。

    • ありがとうございます♪
      本当にもう少しでしたよね。
      どんなに無念だったことでしょう。

  3. 今回のヤマトタケルでは、草薙の剣を置いてきた、白い猪の正体を見抜けない、大きな声で侮辱するなど戦法の失敗を感じてしまうことが多かったです。「思い上がり」で本人の気付かない第六感の「鈍り」があったのでしょうね。慢心は身を滅ぼすという寓話的な要素の強い話になってしまいましたね。
    三重県の由来が三重の曲がり餅のようだと言ったからと言うのは、県民の心情からすると、どうなのでしょう?
    「み」は水、「え」は辺で鈴鹿川の水辺に由来という説もあるようです。
    「英雄のお疲れ発言」からか、「美しい地形」からのどちらが誇りある三重県民を納得させるのでしょうか?
    「疲れた時に心を打明け、休むことの大切さを伝えようとしている」とは、ヤマトタケル発言賛成派の解釈です。上手ですね。

    • ありがとうございます♪
      英雄が亡くなる時ってあっけないというか警戒心を忘れた時なんですよね。
      雹が一応直接原因ですものね。
      それまでの人間の敵より天災によるものとは。

      三重県民はヤマトタケル由来で素敵な名前だと思ってらっしゃるのではないでしょうか。
      伊勢神宮があることを誇りに思ってらっしゃるでしょうから、日本神話の最高神と最高のヒーローですから。
      しかも、部下たちと面白く会話をしているのが魅力的ですね!
      県名を決めた時に、三重を強く押した方がいらっしゃるのでしょうね。
      愛媛も日本神話からですが、愛媛の国学者が推薦したとお聞きしました。

  4. キヨさんコメント

    ヤマトタケルの歌は胸に迫ってきます。
    切なくて涙を誘います。
    青々と連なる山々の向こう、都に思いを馳せながら足をさすり、疲れ切った身体を横たえ、気力も尽きたことを自覚したのでしょうね。
    疲れた身体という枷を脱ぎ捨て、自由に飛び回れた若かりし頃にように、自由な鳥になれた事はよかったです。

    • ありがとうございます♪

      ヤマトタケルの最期は正にそんな状態だったのではないでしょうか。
      キヨさんの表現が愛情こもっていて涙が出ます。

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