日本神話タロット「剱ノ拾」は「古事記」の長い範囲を一枚にまとめています。
記事がとても長くなってしまうため、(121)と2回に分けることにします。
これまでのあらすじ
日本武尊は景行天皇に東征を命じられ、戦い続けましたが、ようやく帰途につきます。
そして尾張国では美夜受比売(ミヤズヒメ)と結婚しました。
伊吹山の神の祟りと都を目指す日本武尊
伊吹山
結婚なさった日本武尊は、いつも身に着けていた草薙の剣(別名:アメノムラクモ)を美夜受比売のもとに置いて
と言って、伊吹山の神を征伐しに出かけます。
山を登って行く時に山の曲がり角で、牛のように大きい白い猪に出会いました。
日本武尊は声高に
今殺さなくても戻る時に殺せばいいだろう。
と仰って山を登って行きました。
しかし、その猪は神の使いではなく、山の神の正体だったのです。
侮辱され、怒った山の神は激しく雹(ヒョウ)を降らせたので、日本武尊は意識が朦朧となってしまいました。
居寤(イサメ)の清水
なんとか山から降り、玉倉部の清水にたどり着き、意識が戻ります。
そのため、その地を居寤(イサメ)の清水といいます。
当芸野(タギノ)
玉倉部をお発ちになり、当芸野にお着きになった時
ところが、今私の足は思うように歩けない。
タギタギしくなってしまった。
と仰ったので、その地を当芸野(タギノ)というようになりました。
杖衝坂(ツエツキザカ)
そこから少し歩いただけでも、とてもお疲れになってしまったので杖をつき、ノロノロと歩きました。
そこでその場所を杖衝坂といいます。
尾津崎(オツノサキ)
それから尾津崎(オツノサキ)(現在の三重県桑名市あたり)の一本松の下に着きます。
すると東征に行く途中でここを通り、食事をした時にお忘れになった剣がまだそこにありました。
そこで、日本武尊は
尾津崎の一本松よ
おまえが人であったなら
太刀を帯させ 着物を着せてやったのに
一本松よ
と歌いました。
三重
それから近くの村にお着きになった時に
と仰ったのでその地を三重と名付けました。
能煩野(ノボノ)
そして能煩野(ノボノ)にお着きになった時に、故郷を思って思国歌 (クニシノビウタ)を詠みます。
たたなづく 青垣
山隠(ヤマゴモ)れる 倭し 麗し
意味:倭は国の最も秀でたところ
重なりあっている山々の青い垣
山々に囲まれた倭は素晴らしい
(121)に続く
日本神話タロット 極参 剱ノ拾(ソード10)「白鳥」
剱ノ拾(ソード10)の意味
・正位置
破滅、決別、災難、低迷
・逆位置
希望が生まれる、再起、運気の上昇
解説文写し
ミヤズヒメと結婚したヤマトタケルは、伊吹山の神を倒しに行きます。
そこまで無敗だったため油断し、草薙の剣をミヤズヒメに預けたまま入山します。
白い大猪を見つけますが
「神の使者だろうから帰りにでも殺すか。」
と言いました。
実はその猪自体が伊吹山の神で、怒って雹を降らせました。
ヤマトタケルは怪我を負うものの、かろうじて下山しましたが、そのまま病に伏せて死んでしまいました。
その後ヤマトタケルは白鳥となり各地を回り、後に天へと登りました。
参考記事
はるさん的補足 神話の英雄と代名詞的武器
日本武尊が亡くなる原因の一つと考えられるのが、東征を共にした草薙の剣を美夜受比売のところに置いていったことです。
新婚の美夜受比売にいいところを見せたかったんでしょうか。慢心でした。
日本武尊にとって草薙の剣は重要なアイテムでした。
このように、自分の代名詞ともいうべき武器を持つ神や英雄は少なくありません。
インド神話のインドラはヴァジュラ(金剛杵)で怪物を退治します。
ギリシャ神話のゼウスは雷で戦います。
北欧神話のオーディンであれば槍のグングニルです。
イギリスの伝説の英雄アーサー王は聖剣エクスカリバーを持ちます。彼はエクスカリバーを岩から抜いて、周囲に正当な王だと認めさせ、亡くなるときには湖に剣を投げ込ませました。
すぐれた武器を持つということは、それを使いこなす能力があり、持つにふさわしい資質があるということでしょう。
だからこそ、その武器を失ったときが英雄の最期となるのかもしれません。
古事記の他の記事
古事記の他の記事はこちらからご覧ください。
上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)
中巻(神武天皇から応神天皇)
下巻(仁徳天皇から推古天皇)