(46) 『日本神話タロット』勾玉ノ伍「オオクニヌシの死と再生」
勾玉ノ伍(ペンタクルス5)「死と再生」

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『日本神話タロット』勾玉ノ伍「オオクニヌシの死と再生」

これまでのあらすじ

兄の八十神達にいじめられていた「オオクニヌシ」ですが「ヤガミヒメ」は「オオクニヌシ」と結婚したいと言いました。

すると八十神達は「オオクニヌシ」に燃えた岩を落として殺してしまいました。

『日本神話タロット』勾玉ノ伍「オオクニヌシの死と再生」

カードの意味

正位置
執着、所有欲、現状維持

逆位置
私利私欲、野心、強欲

『日本神話タロット 極参』勾玉ノ伍
「死と再生」の解説文(写し)

死んでしまったオオナムチ(オオクニヌシ)を復活させるために、赤貝と蛤の神が現れ復活の儀式を行います。

するとオオナムチは復活し、少し大人の顔つきになりました。

生き返ったことに腹を立てた八十神は、木を二つに割いてその真ん中にオオナムチを連れて行き、木で挟んで殺してしまいます。

さらに復活したオオナムチは完全に大人に成長しました。

このままだと何度も殺されてしまうため、オオナムチスサノオに保護してもらうため、根の国へ向かいました。



参考記事

「古事記」におけるこの場面

オオナムチへの八十神の攻撃(「オールカラー古事記」西東社p79)

八十神に殺された「オオクニヌシ」を見て母神は悲しみました。

そして高天原に行って「カミムスビ」に頼み「キサガイヒメ」と「ウムギヒメ」を遣わせてもらいました。

(「カミムスビ」は高天原にいる造化三神の1柱、つまり偉い女神です。詳しくは↓をご覧下さい。)
治療薬を「オオクニヌシ」の体に塗ると
オオクニヌシ」は元気になりました。

しかし八十神はそれを怒り「オオクニヌシ」を山に連れ込み、木の割れ目にはめ込み再び殺してしまいました。

母神はこれを嘆いて今度は自分で生き返らせます。

そして「オオクニヌシ」の身を案じた母神は紀伊國(キイノクニ)の「オオヤビコ」のもとに「オオクニヌシ」を行かせました。

ところが八十神たちはそこにも追いかけて来たので「オオヤビコ」は「オオクニヌシ」に  
スサノオがいる根の堅洲国に行きなさい。きっとスサノオが取り計らってくれるでしょう。」と言いました。

登場する神々

キサガイヒメとウムギヒメ

キサガイヒメ」と「ウムギヒメ」はいずれも「カミムスビ」の娘達と言われています。

・キサガイは赤貝のこと
・ウムギとは蛤のこと
ですから 2柱とも貝の化身だと思われます。

貝にも薬効はありますが、「古事記」編纂期にはまだわかっていなかったという説もあり「オオクニヌシ」の体に塗ったのは
・「カミムスビ」の乳汁であるという説
   母乳の持つ生命力を表している
・2柱が調合したという説
があります。

「オオヤビコ」

「オオヤビコ」は「イザナギ」と「イザナミ」の子とされる 家屋や木を司る神です。

助けを求めてわざわざ紀伊國まできた「オオクニヌシ」に「スサノオ」に助けてもらうようアドバイスをするのですから、あまり強くない神だと思われます。   

はるさん的補足 紀伊國

なぜ「オオクニヌシ」の母神は「オオクニヌシ」を紀伊國に行かせたのでしょうか。
  
   紀伊國は「木の国」とも呼ばれていました。

紀伊山地は1000メートルを超える山々が多く、豊富な雨に育まれた深い森林が生い茂る山岳地帯です。

古来から神々が鎮まる場所と考えられていたことから「オオクニヌシ」の再生を示したり、神としての格を上げたりするために行かせたのかもしれません。

古事記の他の記事

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中巻(神武天皇から応神天皇)

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コメント一覧
  1. ひさこ より:

    なるほど。紀伊に行った理由は気が鎮まる所、という説に納得です。熊野に神様がいる理由もそういう所にあるのかな、と思いました。

    • harusan0112 より:

      熊野は神武天皇も上陸したとされる場所なので古事記編纂をした頃から特別な場所だったのだと思います。
      私は行ったことがないのですが行きたい場所の一つです。

  2. 才色健躾 より:

    八十神はしつこいですね
    しかしそれはオオクニヌシに試練を与え強靭な守護になる為なのですね
    この物語に出てくる木や貝や蛇や兎は何かに例えられている事は分かりました

    • harusan0112 より:

      八十神はしつこいし悪質なイジメですね。
      読んでいて辛くなる場面です。
      おそらく色々な部族が入れ替わり立ち替わり攻撃してきているのを、八十神としているのだとは思いますが酷いものです。
      オオクニヌシもいつも誰かに(特に女性)助けられているイケメン。
      まあ、魅力的なんでしょうね。

  3. さゆ より:

    赤い岩を落とされたり、木で挟まれたりしても、その度に大人に近づくので、これは、神による試練に思えてきました。
    人間の大人も神も、若者が困難を乗り越えて大人になって欲しいと願っているのでしょうね。
    森林浴をすると、健康に良いことが、今は実証されていますが、昔の人は、森林には心身を再生させる力があると知っていたのでしょうね。
    紀伊山地は、森林が広がる神聖な場所と思われていたのですね。
    キサガイは漢字で象貝でいいでしょうか。白い殻です。赤貝の殻はやや黒っぽくて放射肋があり、身は赤くて美味。キサガイヒメは、赤貝の神さまのこと。ややこしいです。
    貝の神さまが現れたことから、貝も生きるのに必要な、大切にすべきものだったのでしょうね。

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます♪
      前向きに試練として捉えるしかないですね。
      まあ大きなことを成し遂げるわけですから、いい思い出に出来るのでしょうか。
      森林の力を古代人の方がリスペクトしていたのでしょう。
      浄化されたり、活用したりして大切にしていたのだと思います。
      ですから「木の国」である紀伊國は神聖な場所なのでしょう。
      貝はわかりにくいですね。
      キサガイは漢字で象貝ですね。でも今の赤貝らしいです。
      地域によっても呼び名が違ったりして(百科事典もないし)統一されていないことによるのかなと思っております。
      ウサギもイノシシも貝も神の使者なんでしょうね。

  4. harusan0112 より:

    イチさんコメント
    天の岩戸のように古来、岩が神の化身とみなされたこと、オオクニヌシを潰した焼けた岩も神の化身かとの解説、木に挟み2度死ぬが、生き返るたびに成長するオオクニヌシ。これが通過儀礼の表現であること、なるほどなと思いながら読ませてもらいました。
    それにしても、ヌナカワヒメかわいそう。スセリヒメも可愛そう。
    タキリビメとはどういう人でどういう出会いをしたんでしょうね?
    スセリヒメのうたはヌナカワヒメのうたに似ていますね。出雲大社での扱いは面白いですね。タキリビメ、カンヤタテヒメ、トットリヒメと、全部で何人と結ばれたのやら。

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます
      大国主命はモテ過ぎて、女性達は苦労しましたね。
      ゼウスがモデルでは?という説もあるので、そうなるとスセリヒメの嫉妬なんて可愛いものですよね。笑
      スセリヒメと奴奈川姫が歌った歌は当時知られた歌だったのでしょうね。似過ぎですものね。
      大国主命は80人の奥様と180人の子供がいたということになってますが、後から地方豪族達が箔をつけるために、先祖は大国主命だと言いたがったり、大国主命に従った豪族を子供と数えたのではないかと言う説もあります。
      例えばタケミナカタは、大国主命の実のこというよりは主従関係の一派の1人と考える方が自然だと思っております。
      大国主命の系譜にお名前がないので。
      地域的に近い、奴奈川姫の息子とする説はロマンチックで好きですが。

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