(128)『古事記』仲哀天皇の崩御と住吉三神による神託・住吉大社
住吉大社 (大阪府)

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これまでのあらすじ

日本武尊の息子の第14代仲哀天皇が即位しました。

仲哀天皇には神功皇后という后がいらっしゃり、懐妊されています。

「古事記」における 仲哀天皇崩御

仲哀天皇は、熊曽国を討とうとなさり筑紫の香椎宮においでになりました。

香椎宮の所在地

仲哀天皇崩御

天皇は琴をお弾きになり、

建内宿禰大臣(タケウチノスクネノオオオミ)が祭場にいらっしゃり、

神功皇后は巫女となって神託を求めました。

この時、皇后に依り憑いた神が

神(神功皇后)
西の彼方に国がある。

金・銀を始め、目が光り輝くばかりの珍しい宝物がたくさんその国にはある。

我は今、その国を天皇に帰属させて授けよう。

と、おっしゃいましたが、天皇

仲哀天皇
高い場所に登って西の方を見ても、国土は見えず、ただ大海があるばかりです。

と、申し上げました。

仲哀天皇は、偽りの事を言う神だなとお思いになり、琴を弾くのをやめてしまいました。

すると、その神は酷く怒り

神 (神功皇后)
もはやこの天下はあなたが統治するべき国ではない。

あなたは一筋の道にお行きなさい。

と、おっしゃいました。

一筋の道とは黄泉の国へ行く道のことです。

そこで建内宿禰大臣天皇

建内宿禰大臣
恐れ入りますが、
我が天皇(オオキミ)、
そのまま琴を弾き続けてください。

そこで、仲哀天皇はゆっくりと琴を引き寄せ、生半可な様子でお弾きになりました。

しかし間もなく琴が聴こえなくなったので、建内宿禰が火をかざして見ると天皇は崩御されていました。

再び神託を求める

このようなことになり、驚き恐れて、仲哀天皇殯宮(モガリノミヤ)に安置して

儀式を執り行いました。

殯宮とは天皇・皇族の棺を埋葬の時まで安置しておく仮の御殿のことです。

そしてさらに国事として祓いの捧げ物を供えて

・生きたままの獣の皮を剥ぐ罪

・獣の皮を逆さに剥ぐ罪

・田の畦(アゼ)を破る罪

・田に引く水の溝を埋める罪

・神域にふんをする罪

・近親の姦淫の罪

・馬、牛、鶏、犬と獣姦する罪

などあるゆる罪を明かして国の大祓(オオハラエ)をして、

再び神功皇后が巫女となり、建内宿禰が祭場に上がり神託を求めます。

国家的に罪穢れを祓う儀式をしてから、神託を求めていたようです。

得られた神託は細部に至るまで前回と同じで、さらに

神 (神功皇后)
この国は神功皇后の御腹にいる御子が治める。

と、おっしゃいました。

建内宿禰
恐れ多くも、皇后の御腹においでの御子は男女どちらでしょうか。
神 (神功皇后)
男子である。
建内宿禰
そのようにおっしゃる大神はどなたでしょうか。
御名を知りたいです。
神 (神功皇后)
これは天照大御神の御心である。

また、
底筒男(ソコツツノオ)
中筒男(ナカツツノオ)
上筒男(ウワツツノオ)

の三柱の大神(住吉三神)である。

本当にその国を求めようと思うなら、

天神地神(アマツカミクニツカミ)

山の神、河海の神々
にことごとく供え物をして、

私の御霊を船の上に乗せて、

真木の灰を瓢箪に入れ、

また、箸と葉盤(ヒラデ)をたくさん作って、

それらを全て大海に散らして浮かべて渡るがよい。
葉盤

と、おっしゃいました。

住吉三神伊耶那岐(イザナギ)黄泉の国から帰って、を行った時に生まれた神々の中の三柱です。

はるさん的補足 住吉三神と住吉大社

住吉大社

住吉三神

底筒男(ソコツツノオ) 中筒男(ナカツツノオ) 上筒男(ウワツツノオ)

はその後、神功皇后とともに住吉大社

航海安全」「」「和歌」などの神として祀られました。

仲哀天皇崩御のお話しはオッカナイけれど、今でも人々に愛され慕われています。

三神の「筒(ツツ)」の字は

・「宵の明星」を「夕星(ゆうづつ)」と読むようにという意味で航海神とする説

・帆柱を受けるくぼみのある柱で船の霊を祀る場所の「」だという説

・「津の男」と読んで港の神と考える説

などがあります。

源氏物語関屋澪標図屏風 複製 (俵屋宗達 画  住吉大社内)

古事記」が編纂された時代は住吉大社付近まで海が入り込み、

海岸線に沿って白砂青松が続く景勝の地であり、

大陸との航海の要衝の地でした。

遣唐使遣隋使の船も住吉の港から船出をし、その際は代々、住吉大社の宮司を乗船させるなどの儀式がなされました。

751年、遣唐使派遣にあたり藤原仲麻呂邸で送別の儀が行われた折、多治比真人土作(タヂヒノマヒトハニシ)が詠んだとされる歌が万葉集に載っています。

住吉(スミノエ)に 斎(イツ)く祝(ハフリ)が 神言(カムゴト)と

行くとも来(ク)とも 船は早けむ

意味

住吉の社の神主のお告げによると、貴殿の船は行きも帰りも、なんの支障もなくすいすい進むとのことでございます。

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コメント一覧
  1. この度も天皇と神の問答より忠告めいたお話しに背き、罪を背負い死に至らしましたお話ですね。
    大事な国の大祓に犯した罪をあからさまにし再び神託を受ける事はキリスト教の懺悔をし救いを求める行事に似ておりますね。
    住吉三神のお話しは初めてお聞きし勉強に為りました。

    • ありがとうございます♪
      神功皇后の口を借りて神が話す、、、それを信じなくて死んでしまった仲哀天皇はお気の毒でした。
      罪穢れを祓ってから神託を、、、キリスト教に通じますね。
      特筆すべきは日本は田んぼを穢すことが重罪だということなのです。
      地位の高いスサノオが高天原から追放されたのも、田んぼを穢したことで神々の怒りをかったからと言われています。
      住吉から遣唐使や遣隋使が出発していたのは初めて知りました。
      陸路で福岡辺りに行き、そこから船というより安全だったんでしょうかね。

  2. 琴が奏でられていることはお告げをする神にとって大事なことなのでしょうか?
    仲哀天皇は正直過ぎて損をしてしまいましたね。
    この神は、天照大御神の御心で住吉三神の使いの神ですが、ちょっと短気ですね。
    住吉大社は大阪市住吉にあるのですね。住吉三神の神託を受けたから、神巧皇后も祀られているのですね。大きくてりっぱなようで訪れてみたくなります。

    • ありがとうございます。
      神託を聞く儀式にことが必要なんでしょうね。
      敬意を表していたのでしょう。
      仲哀天皇はお気の毒ですが、神功皇后の口から語られると、信用し切っていいものかと思ったでしょうね。
      住吉三神、この物語では短気過ぎです。泣
      すぐ殺しすぎ。
      しかも天皇を。
      海が入り込んでいたから住吉をスミノエと呼ぶ
      というのが風情があっていいですね。

  3. 神事を司って国を治めるのが天皇家でしたよね。神功天皇は巫女だったのですね!住吉大社も行ってみたい神社の一つです

    • ありがとうございます♪
      神功皇后は実在した可能性が低そうですが、神がかりができるという設定ですね。
      イザナギが日向で産んだ神がひょんな所で活躍です。

  4. 「♪西にはあるんだ夢の国ンニキニン」なんて歌を思い出しました(^_^;)
    (ドリフターズがやっていた西遊記の人形劇、ご存知ですか?!内容については自分物心ついてなかったからか覚えていないのですが、歌はとても印象深く残っています(^_^;)
    https://youtu.be/VbO6ToCqS_Q

    いや西遊記でもなければ天竺(インド?)とかそういう話は一切関係ないのですが。

    大海の向こうには大陸・半島がある、それについては思いもよらなかった、と言ったところでしょうか。
    「信じないのか?ならば○ねい!」なんて事になるのは、なかなかな恐怖だったりもしますが(^◇^;)
    神様に対面するのにはそれだけ真剣さが必要ということなのでしょうね。

    天津罪国津罪はこの時に確立された?のですね。自分はよく話しているかもしれませんが、
    神社さんで奏上される一番の基本の祝詞「大祓」の中に天津罪国津罪が出てくるのですが、かつては天津罪国津罪の内容・詳細についても列挙されていたのが、現在では削除、省略されています。

    天津罪(”と生き肌断ち死に肌断ち・・”)
    国つ罪(”は己が母犯せる罪 己が子犯せる罪 ・・獣犯せる罪・・・”)
    いくつかの神社さんでは今でも「省略しないバージョン」が奏上されており、
    伊勢国一之宮の椿大神社さんではご祈祷をしていただいたら聞く事ができたりします。

    「罪の内容については、今日の「罪」の観念にあわないものが多く、差別的ととられかねないものもあることから、神社本庁の大祓詞では罪名の列挙を省略して単に「天津罪・国津罪」とだけ言っている(大正3年内務省制定の大祓詞にて削除されたものが踏襲されている)。 wikipediaより」

    • あともう一つ「もがり」について・・・語源は違うかもしれないのですが、冬に吹き荒れる事のあるものすごい冷たい・強い風「ぴゅううう!!」という風のことを「もがり笛(もがりぶえ)」と言ったりします。
      俳句の冬の季語なのですが、なんともすごい、凄まじい感じが。。

    • ありがとうございます♪
      ドリフの歌、かすかに記憶がございます。
      ドリフが歌うとのどかで楽しい感じですが、こちらは勇ましくオッカナイお話しですね。

      獣の皮を逆さに剥ぐ罪はスサノオが馬を
      機織女に投げ入れたところから来ているようですね。
      若かりしスサノオは酷いことをしました。

      もがり笛、存じませんでした。
      俳句の季語までよくご存知ですね!
      今ググってみましたが、語源はわかりませんでした。
      でも、モガリノミヤの周辺で咽び泣く声とかに似ていたのかもしれませんね。

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