(19)『古事記』における「ウケイ」とは
スサノオのウケイ 「神代正語常磐草
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(19)『古事記』における「ウケイ」とは

古事記」を読んでいると何度か「ウケイ」という言葉に遭遇します。

(18)の記事で「アマテラス」に高天原を奪いに来たのではないかと疑われた「スサノオ」が
「ではウケイをして子供を産みましょう」
と答える場面が出てきました。

今回は「ウケイ」について説明しましょう。

「ウケイ」の表記

古事記」では「誓約」「宇気比」「」「」と表記されています。

「ウケイ」とは何か

ウケイ」とは簡単に言えば占いの一つです。

〇〇なら△△になる、✖️✖️なら□□になる」とあらかじめ決めて誓約し、どうなるかによって神の意思や物事の正邪を判断する方法です。

「古事記」に「ウケイ」が登場する3つの場面

①「スサノオ」と「アマテラス」の「ウケイ」

高天原に来た「スサノオ」は邪心が無いことを「ウケイ」によって証明すると言います。

二神は「天の安河(アメノヤスカワ)」を挟んで「ウケイ」をしました。

すると、「スサノオ」の十拳剣(トツカノツルギ)から三柱の女神が生まれました。

次に 「アマテラス」の勾玉(髪飾り)から五柱の男神が生まれます。

アマテラス」は
後に生まれた五柱の男神は私の子で、先に生まれた三柱の女神はあなたの子です。

と言いました。

すると「スサノオ」は
私の心が清く明るいので、私の生んだ子はか弱い女の子なのです。

と言って勝利宣言をし、高天原の住人となりました。

不思議なことに、この場面では
「〇〇なら△△になる、✖️✖️なら□□になる」とあらかじめ決めて(誓約して)いなかった
ものと思われます。

②葦原中国に派遣された「アメノワカヒコ」の反逆

オオクニヌシ」が平定した葦原中国を譲るように説得しろと「アマテラス」と「タカミムスビ」のよって派遣された「アメノワカヒコ」は「オオクニヌシ」に懐柔されてしまいます。

タカミムスビ」は
「もしアメノワカヒコが命令にそむいてなかったら、矢に当たらないだろう。
でも、もしオオクニヌシに寝返っていたら矢に当たれ。」

と言って「ウケイ」をし矢を投げ落としました。

すると、矢は「アメノワカヒコ」の胸に当たり「アメノワカヒコ」は死んでしまいました。

③「コノハナノサクヤヒメ」の火中出産

天孫「ニニギ」の子を宿した「コノハナノサクヤヒメ」に「ニニギ」は
「本当に俺の子か?」
と訊ねます。

コノハナノサクヤヒメ」は
天津神(アマツカミ)であるあなたの子なら、何があっても無事に産めるはず
と「ウケイ」をして産屋に火を放ち、その中で無事出産をして身の潔白を証明しました。

参考記事

はるさん的補足

アマテラス」と「スサノオ」の「ウケイ」は「〇〇なら△△になる、✖️✖️なら□□になる」という誓約のない物でした。

しかし「スサノオ」は「潔白が証明された」と宣言し、高天原に入ることを許されました。

一方「アマテラス」は「私の勾玉(髪飾り)から生まれた男神は私の子だ」と言います。

男神の一人「アメノオシホミミ」は皇室の祖先とされますが、この「ウケイ」の物語によって「アメノオシホミミ」は「アマテラス」の子と示さたので、「アマテラス」が皇祖神であるという解釈が生まれることとなりました。

二神の「ウケイ」は「スサノオ」の勝利宣言以上に「アマテラス」の絶対的地位を確立する大切な誓約だったのです。

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