(78)『日本神話タロット』鏡ノ玖「ホデリ(海幸)とホオリ(山幸)」
「鏡ノ玖」 カップの9

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これまでのあらすじ

コノハナサクヤヒメ(木花之佐久夜比売)」は地上を治めるために降臨した「ニニギ(邇邇芸)」との間に3人の男児を産みました。

コノハナサクヤヒメ」が火中出産をして天津神であることが認められた子たちは
・「ホデリ(火照命)」
・「ホスセリ(火須勢理命)」
・「ホオリ(火遠理命)」
と名づけられました。

「ホデリ」は海幸彦、「ホオリ」は山幸彦となります。

なお「ホスセリ」については「産まれた」という以外は「古事記」には登場しません。

『日本神話タロット 極参』
 鏡ノ玖 (カップの9)

鏡ノ玖 (カップの9)の意味

正位置
幸福、願いが叶う、成功、栄誉

逆位置

暴挙、援助を失う、読みを間違える

『日本神話タロット 極参』
鏡ノ玖 (カップの9)
の解説文(写し)

「ホデリ」(海幸彦)と「ホオリ」(山幸彦)は名前の通り、漁と猟が得意でした。

ある時「ホオリ(山幸彦)」は
「本当に自分は猟が得意なのか?もしかしたら漁の方が得意なのではないか?」
と思い、「ホデリ(海幸彦)」に無理を言って道具を交換してもらいます。

が、糸が切れてしまい、「ホデリ(海幸彦)」の大事な釣り針を無くしてしまいます。

怒った「ホデリ(海幸彦)」は
「(釣り針を)探してくるまで、(猟の)道具を返さない」
と言い
ホオリ(山幸彦)」を責めます。

困っていると、そこに現れた「シオツチノカミ」が
「海底にあるワダツミの宮にあるかもしれない」
と、教えてくれました。

「古事記」におけるこの場面

ホデリ(海幸彦)」は大小さまざまな魚を獲り、「ホオリ(山幸彦)」は大小さまざまな獣を獲っていました。

ある時「ホオリ(山幸彦)」が

ホオリ
獲物を獲る道具をお互い交換しませんか。

と言いましたが、「ホデリ(海幸彦)」はなかなか応じてくれませんでした。

何度も頼んで、ようやく交換してもらえましたが「ホオリ(山幸彦)」は海の魚を1匹も釣れず、しかも「ホデリ(海幸彦)」の道具を海に落としてなくしてしまいました。

しばらくして「ホデリ(海幸彦)」が

ホデリ
山さちも己がさちさち、海さちも己がさちさち。
さあ、互いに道具を元通りに返そう。

と言いました。

さち」というのは神の力が宿った道具であり、収穫した獲物でもあります。
ホデリ」が言った言葉は呪文のような物でしょう。
これを唱えることによって「さち」の力が元に戻ることになると思われます。

ホオリ
兄さんの釣り針では一匹も釣れず、しかも釣り針をなくしてしまいました。

と謝りましたが「ホデリ(海幸彦)」は許しません。

ホオリ(山幸彦)」は持っていた剣を壊して500本もの釣り針を作り、許してもらおうとしましたが、兄は受け取らず

ホデリ
やはり元の釣り針を返してくれ。

と言い迫りました。

ホオリ(山幸彦)」が海辺で嘆き悲しんでいると「シオツチノカミ(塩椎神)」がやって来ました。

シオツチ
「ソラツヒコ(虚空津日高)」はどうして泣いているのですか。
ソラツヒコ(虚空津日高) 」とは
ホオリ(山幸彦)」のことで
天と地を繋いでいる男(地の志尊者)という意味です。

ホオリ
私は兄と釣り針を交換してなくしてしまいました。
代わりに釣り針をたくさん造って償おうとしましたが、兄は元の針をよこせと言って受け取ってくれないのです。
それで嘆き悲しんでいるのです。

これを聞いた「シオツチノカミ(塩椎神)」は

シオツチ
いい考えがある。

と言い、竹で編んだ小舟を造り「ホオリ(山幸彦)」を乗せて言いました。

シオツチ
私がこの小舟を押したらしばらくそのまま行きなさい。
きっと良い潮路があるでしょう。
そのまま潮路に乗っていけば、魚の鱗のように棟が立ち並ぶ宮殿が見えるでしょう。
それが「ワタツミ(綿津見)の宮」です。
宮殿の門に着いたら傍らの泉のほとりにある桂の木に登りなさい。
そうすれば海の神の娘があなたを見つけて相談に乗ってくれるはずです。

と言いました。

写真は「ホオリ(山幸彦)」が「シオツチノカミ」と出会った場所と言われている青島神社です。


(写真は宮崎県観光協会さんのhpからお借りしました)

青島神社(宮崎県)

参考

古事記」では、この時は神は海も陸も自由に行き来できていたという設定になっているようです。

私がオープンカレッジで受けた授業では、教授が
このような位置関係ではないか?」と解説していました。

神話ですので、解釈は色々ありますが、イメージの参考 にしてください。

はるさん的補足
「シオツチノカミ」とは

この「シオツチノカミ」という神は
古事記」ではここでしか登場しません。

漢字では「塩椎神」と表記され

・塩は潮のこと
・椎は霊のこと

つまり海流の神様という意味です。

また「シオツチノカミ」は突然あらわれて
「ホオリ」(山幸彦)を一目見るなり
「ホオリ」(山幸彦)地の至尊者虚空津日高(ソラツヒコ)」だと見抜き
的確なアドバイスをしてくれました。

そのことから、「シオツチノカミ」は潮流や海路を司ると共に、とるべき行動を示してくれる神とされています。

日本書紀」では「シオツチノカミ」は「イザナギ(伊邪那岐)」の子とされ、神武天皇にもアドバイスをしています。

また「タケミカヅチ(建御雷神)」は「シオツチノカミ」の先導で諸国を平定したという伝説もあります。

そして「シオツチノカミ」は東北に行き人々に漁業や製塩方法を教えたと言われ、宮城県の「塩竈神社」などに祀られています。

古事記の他の記事

古事記の他の記事はこちらからご覧ください。

上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇)

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