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「アマテラス」による地上統治計画⑤「タケミカヅチ」
これまでのあらすじ「オオクニヌシ」が葦原中国(地上)を平定すると、「アマテラス」が
「地上は私の子供に統治させたいわ!」
と言い出します。
高天原から「ホヒ(天菩比神)」や「ワカヒコ(天若日子)」を送り、様子を窺わせますがいずれも失敗に終わりました。
「アマテラス」による地上統治計画⑤「タケミカヅチ」
「古事記」におけるこの場面
アマテラス
今度はどの神を遣わせようかしら!
オモイカネ
天の安河の川上の「天の石屋」にいる「アメノヲハバリ(天尾羽張神)」を遣わすといいでしょう。
足元の悪い場所なので「鹿の神」である「アメノカク(天迦久神)」を遣わせ「アメノヲハバリ」に意向を尋ねさせました。
すると
アメノヲハバリ
恐れ多いことです。
お引き受けますが、私ではなく息子の「タケミカヅチ(建御雷)」に行かせましょう。
お引き受けますが、私ではなく息子の「タケミカヅチ(建御雷)」に行かせましょう。
「アマテラス」は「タケミカヅチ」に「鳥と船の神」である「アマノトリフネ(天鳥船神)」を副えて地上(葦原中国に)遣わせました。
「タケミカヅチ」とはどんな神か
「タケミカヅチ」の出生
「イザナギ」と「イザナミ」が神生みをしていた頃、「カグツチ(迦具土)」という「火の神」を生みます。すると「イザナミ」は産道を火傷してしまい、亡くなってしまいました。
怒った「イザナギ」は「カグツチ」を「アメノヲハバリ(天尾羽張)」という刀で殺してしまいました。
その刀についた血から生まれたのが「タケミカヅチ」です。
このエピソードでは「アメノヲハバリ」が喋っていますが、あくまで刀ですので「タケミカヅチ」の父は「カグツチ」だと書いている本もあります。
漢字から考える
「古事記」での漢字表記は「建御雷」です。・「建」…勇猛な
・「御」…神秘的な
・「雷」…厳(イカ)つい霊(雷)
・「御」…神秘的な
・「雷」…厳(イカ)つい霊(雷)
このことから「アマテラス」は官僚的な優男に見切りをつけ最強の神(真打ち)を登場させたと言えるでしょう。
恐らく「タケミカヅチ」は見た目から相手を威圧するような風貌っだと思われます。
しかし武力で制圧するのではなく、あくまでまずは話し合いでというのが基本的スタンスです。
「アマノトリフネ(天鳥船神)」とはどんな神か
たくさんいる「イザナギ」と「イザナミ」の子供の1柱です。今の感覚だと、兄弟や親戚?に格差があるのは不思議に思われるかもしれませんが、神々の世では天と地ほどの格差があります。
上の系譜では「イザナギ」単体から生まれた「アマテラス」が圧倒的に偉く、次いで「タケミカヅチ」、「アマノトリフネ」の順となります。
名前と漢字から考える
「天鳥船神(アメノトリフネ)」は「鳥之石楠船神(トリノイハクスフネノカミ)」という別名を持っています。「鳥の神」であると同時に「船の神」でもあり
「鳥の速さ、岩石の強さ、楠という良質な船材で表現される品格の良さ」
を兼ね備えた神だと思われます。
「アメノトリフネ」は「日本書紀」には登場しません。
はるさん的補足
「ヤマト王朝」の東国進出
「タケミカヅチ」は元々茨城県香島で祀られていた神で「香島大神」と呼ばれていました。
その「タケミカヅチ」が何故、重要かつカッコいい役割を与えられたのでしょうか。
「アマテラス」などの天津神が「ヤマト王朝」だと考えると、「ヤマト王朝」の東国進出と関係があると言われています。
「ヤマト王朝」は4世紀末ごろから東国に進出し始め、5世紀半ばには本格的に進出したと見られています。
その中で、現地の神と中央の神々を結びつけ、東国との融和を図ろうという試みがあったと思われます。
その際尽力したのが 中臣 氏です。
7世紀に中臣氏が鹿島の地を治めるようになり、中臣氏を通して「古事記」に取り入れられたとも考えられています。
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上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)
中巻(神武天皇から応神天皇)
下巻(仁徳天皇から推古天皇)
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