(26)『古事記』祝詞と言霊の神「アメノコヤネ」
春日大社(奈良県)
前のページ(25)「豪腕 タヂカラオ」
次のページ(27)「アマテラスの岩戸隠れ」

(26)『古事記』祝詞と言霊の神「アメノコヤネ」

これまでのあらすじ

ウケイ」によって高天原に残ることを許された「スサノオ」は、調子に乗って乱暴な振る舞いをしました。

アマテラス」は怒って天岩戸に閉じこもってしまいます。

すると高天原も地上も真っ暗になってしまい、災いも起きるようになりました。

そこで「オモイカネ」を中心に「アマテラス」を引っ張り出す大作戦「天岩屋祭り」が計画されます。

その時に祝詞を唱えた神が「アメノコヤネ」です。

「アメノコヤネ」とは

伊藤龍涯 画 火の前に立っている神が「アメノコヤネ」

「アメノコヤネ」を名前から考える

古事記」での漢字表記

天児屋命
アメノコヤネノミコト

アメ、、、、天の、高天原の
コヤネ、、、小さな屋根(託宣の神の居場所)
   、、、又は、祝詞を美しく奏上する
ミコト、、、神

つまり「アメノコヤネ」は
神のお告げを聞き取り、神に祈り捧げる天の神」ということになります。

八百万の神にとっても「」という存在があったことがわかりますね。

「アメノコヤネ」が登場する場面

古事記」に「アメノコヤネ」が登場するのは2箇所です。

①「天岩屋」で祝詞をあげる

天岩屋に閉じこもった「アマテラス」を引っ張り出すという作戦では、まず神事を行いました。

その時に「アメノコヤネ」が祝詞を唱えます。

その祝詞は「アマテラス」の偉大さや美しさを目一杯誉めて、気分良くさせる内容だったと言われています。

②「天孫降臨」の場面

アマテラス」の孫「ニニギ」が地上に降臨する時に「ニニギ」に随伴します。

そして中臣連(ナカトミムラジ)の祖先になった、と記されています。

神としての「アメノコヤネ」

言霊・祝詞の神

天岩屋神話」では「アメノコヤネ」は神霊に憑依されていたとも言われています。

祝詞を唱えるというのは、
神の働きに感謝し賞賛する言葉を申し上げ、さらなる幸運をもたれせる行為です。

言霊呪力を持ち、人の心を動かして良いことも悪いことも含めて色々な形で表れるとされています。

天岩屋神話」は言霊信仰のルーツと言われており
アメノコヤネ」は「言霊・祝詞の神」となりました。

中臣氏・藤原氏の祖神

三田春日神社 東京都
アメノコヤネ」は中臣氏の祖神となりました。

中臣は神と人との間を取り持つという意味です。

中臣氏は宮廷の神事を総括して、政権の中で大きな影響力を持っていました。

神武天皇が「アメノコヤネ」を東大阪の枚岡(ヒラオカ)神社に祀らせたのが始まりと言われています。

(初代天皇である神武については後日別記事にします。)

後に中臣氏は藤原氏となり春日大社勧請(カンジョウ)され、春日神と習合されたことから「春日さま」とも呼ばれるようになりました。

春日さま」は奈良の春日大社など全国の春日神社に祀られています。

はるさん的補足 日本の勧請とは

伏見稲荷大社(京都府)
勧請(カンジョウ)という言葉が出てきたので、簡単に説明します。

日本では
・仏神の霊や像を寺社に新たにむかえて奉安すること
・神仏の分身・分霊を他の地に移して祀ること
を指します。

神道では神霊は無限に分けることができ、分霊しても元の神霊に影響はなく、分霊も本社の神霊と同じ働きをし、同じご利益を得られるとされています。

例えば全国にある春日神社の総本社は春日大社で、あちこちにある稲荷神社の総本社は伏見稲荷大社ですが
近所の春日神社は春日大社と、近所のお稲荷さんも伏見稲荷同じ働きをし、同じご利益があるということです。

ありがたい限りですね。

なお、勧請は本来は仏教用語でしたが、神仏習合により「神仏の霊を迎えて祈願」を指すようになりました。

花姫稲荷(東京都)

古事記の他の記事

古事記の他の記事はこちらからご覧ください。

上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇)

にほんブログ村

前のページ(25)「豪腕 タヂカラオ」
次のページ(27)「アマテラスの岩戸隠れ」

コメント一覧
  1. 中臣鎌足につながる中臣氏と権勢を誇った藤原氏がいよいよ登場ですね!勧請って…フランチャイズみたく全国的に同じ恩恵をうける感じですね❣️おもしろい仕組みです❗️

    • ありがとうございます♪

      藤原氏への忖度かもしれませんが、天津神の一柱アメノコヤネ、面白い神なので
      番外編にしました。
      勧請、便利で日本的発想。
      面白いですね。

  2. 中臣といえば、大化の改新を中大兄皇子と行った中臣鎌足ぐらいしか思い浮かばないです。アメノコヤネが祖なんですね。中臣鎌足は藤原の姓を賜り、初代藤原になったのですね。
    占い師のアメノコヤネの言霊は絶大だと思いますが、言葉は人間関係を良くも悪くもするので、アメノコヤネのように、言葉で人を気分良くできればいいなと思います。

    総本社でも地元の神社でも神格が同じというのは、本当にありがたいです!勧請の意味も仏教用語から、神道にも用いられるように広がっていったのですね。
    アメノコヤネは今までに出てきた神々の誰かと繋がりはあるかしら?藤原だからタカムスビの祖先とか?

    • 中臣鎌足から藤原姓になったようですね。
      そして勧請で春日大社にって日本人的柔軟性のある発想と決断ですよね。

      アメノコヤネの出自は諸説ありますが古事記には記されていません。
      オモイカネと同一視されることや、混同されることもあるようで。

      アマテラスが持統天皇への忖度だという方の中にはアメノコヤネは藤原氏へ忖度と言う人もいます。
      藤原氏の始祖が天津神だというのは大変な家柄ということになりますからね。

  3. 天児屋命・・祝詞の神様ですね祝詞についてのお話になってしまいますが、
    お祭りって、神職が「祝詞を唱える」のがメインイベントなんですよね。

    その前に失礼が無いよう清めたり(神職さんがシャンシャン✨するやつ)
    お供え物をしたり、あとは巫女さんの舞があったり、外ではおみこしや山車がねり歩いたり
    縁日の屋台がいっぱい出たり(地元でヤンキーのお兄ちゃんたちが張り切ってたり)
    そういうのはほとんど添え物で。
    とにかく祝詞奏上が一番のイベント。

    その祝詞の内容というのは基本「たたえごと」
    神様のことをめちゃくちゃ賞賛して、そのあとお願い事を続けて言って
    ちゃっかり叶えてもらおうという感じなんですよね。

    (続きます)

    • (続き)というか以下ちゃんとした説明 (神社本庁のホームページより)
      「祝詞とは、祭典に奉仕する神職が神様に奏上する言葉であり、その内容は
       神饌・幣帛(へいはく)を供えて、
       御神徳に対する称辞(たたえごと※)を奏し、新たな恩頼(みたまのふゆ)を
       祈願するというのが一般的な形といえます。(以下略)」(神社本庁 ,祝詞について,
      https://www.jinjahoncho.or.jp/omatsuri/jinja_no_omatsuri/norito )

      ブログ本文中ではるさんがご紹介しておられた
      天児屋命をおまつりする枚岡神社(ひらおかじんじゃ)さんが、見事な
      大祓奏上をYoutubeにアップしておられます。
      何か問題があった時とかにこちらを流したら綺麗に祓われそうな感じがします✨
      https://youtu.be/TuAUjQftRiI

      • ありがとうございます♪

        YouTube拝見しました
        初めて祝詞を一生懸命聞きました。笑

        神に届きそうな、届くことを祈っての祝詞ですね。
        コヤネさんは中臣連の祖ですからその泰斗だったわけですね。

        国家のために祝詞を上げる基礎、言霊信仰の基礎を作って下さったのでしょう。
        感謝しなくてはいけないですね。

コメントを残す

古事記の関連記事
おすすめの記事