シナバーは「賢者の石」という別名でも知られる水銀の鉱石鉱物です。
朱色の顔料 (日本画や神社の鳥居) や漢方薬の原料として今も使われています。
薬に使われるけれども毒もあります。
シナバーについて
シナバーとは
シナバーは鮮やかな朱色の硫化水銀から成る鉱物で、粒状の集合が塊状で産出されます。
化学式は HgS です。
シナバーの名前の由来
シナバーは
・ギリシャ語の
「kinnabaris」(赤い物という意味)に由来しているとも
・アラビア語の
「zinjafr」(龍の血という意味) に由来しているとも言われます。
シナバーの和名
シナバーの和名は辰砂(シンシャ)です。
中国の辰州から多く産出されたことに由来しています。
その他に東洋医学では朱砂(シュシャ)や丹砂(タンシャ)とよばれることもあるようです。
また日本ではかつて丹(ニ)と呼ばれていたこともあります。
シナバーの別名「賢者の石」
シナバーは古来から「賢者の石」と呼ばれており、
ハリーポッターの「賢者の石」もシナバーのことではないかと言われています。
「賢者の石」とは
銅や鉛などの卑金属を
金や銀などの貴金属に変えることができる石のことです。
中世ヨーロッパの錬金術師は水銀を触媒とすることで「賢者の石」ができると信じていました。
シナバーは水銀と硫黄の化合物なので「賢者の石」と呼ばれるようになり、インドや中国では「不老不死」の薬だと信じられていたようです。
シナバーの毒
「不老不死」の石だと信じて服用していたインドや中国の皇帝がいらっしゃいましたが、大量摂取すると水銀中毒を引き起こしてしまい、かえって早死にしてしまった方もいらっしゃるようです。
秦の始皇帝もその一人で、シナバーを原料に「丹薬」を作らせ飲んでいたために50歳で亡くなってしまいました。
(毒殺されたという説もあります。)
「不老不死」を信じたわけでなくても(割と最近まで)
水銀は(強力な下剤なので) 体内から毒を排出してくれると思われており、
・アメリカのリンカーン大統領
・ナポレオン
・作家のエドガー・アラン・ポー
・アメリカのジャクソン大統領
などは好んで水銀を口にしていたようです。
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シナバー製の装飾品や印鑑などは問題はないようですが、加熱した蒸気に毒性があります。
シナバーは水銀の鉱石鉱物です。
シナバーを製錬(400°〜600°で加熱し冷却する)することによって液体の「金属水銀」をとりだします。
金属水銀は他の金属と合金アマルガムを作りやすいという性質があります。
わずかであっても水銀を含んだ蒸気を発すると言われ、歯の治療に使用禁止になっている国もありますが、日本ではまだ使われています!
また、アマルガムは古くから金メッキとして使われてきました。
大仏と同時に大仏殿も建立されたので、屋内で大量の高濃度水銀蒸気が発生したものと想像されています、、、。
世界中の鉱山で19世紀から20世紀まで盛んにこの技法でアマルガムが作られ、深刻な水銀汚染を引き起こしました。
シナバーの硬度
モース硬度 2〜2.5
💎参考記事
シナバーの光沢
金属光沢
💎参考記事
シナバーの石言葉
・ひらめき
・感情
・天啓
シナバー 誕生日石
なし
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シナバーの使われ方
顔料として
顔料としては弥生時代には古墳の内壁や石棺の装飾に使われていたことが確認されています。
高松塚古墳は藤原京時代の古墳とされていますが、
その壁画が鮮明な色を長期間(1300年以上) 保っているのは
顔料として(天然の鉱物を砕いた) 岩絵具を使っているからといわれています。
・赤はシナバーが原料の「朱」
・緑色はマラカイト(孔雀石)が原料の「岩緑青」
・青はアズライト(藍銅鉱)が原料の「岩群青」
・黄土色は黄色いゲーサイト(針鉄鉱)や赤鉄鉱(いわゆる鉄錆)を混ぜた岩絵具が使われたことがわかっています。
日本では朱色は神聖な色とされているので、神社の鳥居の塗装や朱肉に使われてきました。
スペインのアルマンディン地方では紀元前2000年頃からシナバーの採掘が行われていて「バーミリオン」という名前の顔料を作ってきました。
今でもシナバーの顔料は「朱色」や「バーミリオン」と呼ばれる高価な岩絵具として使われています。
💎参考記事
鉱物からつくる岩絵具 (顔料) どんな鉱物が絵具として使えるか
漢方薬として
シナバーに毒性があることを書きましたが、漢方薬として今も使われています。
日本では販売されていませんが、中国では今もシナバーが入っている漢方薬が売られているそうです。
解熱や精神の安定に効能があるとされています。
もちろん専門知識のある薬剤師さんが調合しています。
はるさん的補足 ミネラルの語源
シナバーは最も歴史が古い硫化鉱物だと言われています。
シナバーの使われ方を見ても、人類の歴史に大切な役割りを担っていたことがわかりますね。
英語で
鉱物を「mineral」
鉱山を 「mine」
といいます。
それらはラテン語の「mineraria」(水銀鉱山という意味)に由来するそうです。
水銀がどれほど古くから採掘され、重宝されてきたかわかりますね。
シナバーの主な産地
・中国 🇨🇳
・アメリカ 🇺🇸
・メキシコ 🇲🇽
・スペイン 🇪🇸
・ペルー 🇵🇪
・スロベニア 🇸🇮
かつては日本でも三重県の丹生鉱山や奈良県の大和水銀鉱山で採れたようですが現在は閉山しています。
都道府県にはそれぞれ「県の石」があります。
シナバーは三重県の石です。