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「アマテラス」による地上統治計画③「アメノワカヒコ」
これまでのあらすじ「オオクニヌシ」の国作りが終了するのを待っていたかのように「アマテラス」は
「葦原中国は自分の子に治めさせたい。」
と言い出しました。
「アマテラス」と「スサノオ」のウケイによって生まれた長男「アメノオシホミミ」を派遣しようとしましたが恐れて戻って来てしまいました。
「オモイカネ」などと相談し、次に送った神は「ウケイ」によって生まれた次男「アメノホヒ」です。
しかし「アメノホヒ」は「オオクニヌシ」に取り込まれ、三年経っても音沙汰がありませんでした。
「アマテラス」による地上統治計画③「アメノワカヒコ」
「古事記」におけるこの部分
仕方がないので「アマテラス」は「タカミムスビ」と相談し高天原の神々に聞きました。アマテラス
「アメノホヒ」は葦原中国に行ったけど、長い間報告もしてこないの!
次はどの神を使者に立てたらいいかしら。
次はどの神を使者に立てたらいいかしら。
オモイカネ
「アマツクニタマ」の子「アメノワカヒコ」に行かせましょう。
「アマテラス」は天の使節として、麻迦古弓(マカコユミ)と天の波々矢(アメノハハヤ)を「アメノワカヒコ」にお与えになりました。
麻迦古弓(マカコユミ)と天の波々矢(アメノハハヤ)は神の力が宿った弓矢(武器)だと考えられます。
しかし、すぐに「オオクニヌシ」の子「シタテルヒメ」と結婚し、葦原中国を自分のものにしようと企て、8年(とても長い間)も報告しませんでした。
この部分の解説
「アメノホヒ」は「オオクニヌシ」に取り込まれ、何の報告もせず三年経ってしまったので、今度は「アマテラス」の子供ではなく「アマツクニタマ」の子「アメノワカヒコ」に行かせることになりました。
今回も交渉が目的であり、戦いに行くのではありません。
しかし「アメノホヒ」の時には持たせなかった武器を「アメノワカヒコ」には持たせます。
それは、強大な力を持つ「オオクニヌシ」や「荒ぶる神々」の前に出ても物怖じしないように持たせたのであろうと思われます。
「アマツクニタマノカミ」とはどんな神か
「古事記」では「天津国玉神」と表記されています。「アメノワカヒコ」の父ということでしか出てきません。
「国玉」とは国魂という意味なので「天の意志そのものの神」という意味になります。
ですからその御子を葦原中津国に差し向けるということは、葦原中津国を何がなんでも帰属させるという「アマテラス」や「タカミムスビ」の意志を感じます。
「アメノワカヒコ」とはどんな神か
「古事記」では「天若日子」と表記されています。「ワカヒコ」は「若く秀でた男」という意味です。
若いというのは魅力でもありますが、反面、未熟で「シタテルヒメ」の誘惑に負けてしまいました。
「シタテルヒメ」は「オオクニヌシ」と宗像三神の一柱である「タキリヒメ」の娘で、お名前の通り女性としての魅力がとてもあった姫だと思われます。
何もしなかった「アメノホヒ」と違い、「アマテラス」に対する完全な背信行為です。
はるさん的補足
民間に人気の「アメノワカヒコ」
この後「アメノワカヒコ」は反逆したということでウケイによって亡くなります。(次回はこのお話です)
しかし、「アメノワカヒコ」は恋に溺れて使命を放棄し、悲劇的な亡くなり方をした男として民間に人気があります。
平安時代の「うつほ物語」「狭衣草子」や室町時代の「御伽草子」の日本版「七夕物語」の彦星に相当する男性として登場し、いずれも美男子として描かれています。
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上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)
中巻(神武天皇から応神天皇)
下巻(仁徳天皇から推古天皇)
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