❽『日本神話タロット』恋人「イザナギとイザナミの婚姻の儀」
恋人「婚姻の儀」
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『日本神話タロット 極参』恋人

イザナギとイザナミの婚姻の儀

「恋人」のカードの意味

正位置

恋愛、共感、性的な喜び、肉体的な魅力

逆位置
誘惑、不道徳、失恋、浮気、迷い、破綻

『日本神話タロット 極参』恋人「婚姻の儀」の解説文(写し)

大地を作り、地上に降りた イザナギイザナミは天御柱(てんのみはしら)を周り婚姻の儀を行います。

一度目はイザナミから声をかけてしまったため失敗してしまい、不完全な姿のヒルコが産まれてきた ので、船に乗せ川に流してしまいました。

その後、改めてイザナギから声をかけたことにより成功し、様々な神を生むことになります。

※今では医療が進み、生かすことができるようになりましたが、当時はそのような技術がない上、不吉なものとして捨てられていたようです。

2神の行った「婚姻の儀」とは

イザナギ」と「イザナミ」は「国生み」で生んだ最初の島「淤能碁呂島(オノゴロジマ)」に降り、天御柱(てんのみはしら)を建て御殿を作りました。

平田篤胤画 淤能碁呂島
2神は柱の周りを逆方向から廻って会い、「みと(陰部)のまぐわい(交わり)」をする約束をします。

2神が会うと「イザナミ」が「なんて美しい男でしょう」と声をかけました。

うまくいかない「神生み」

そうして生まれたのが不完全な「ヒルコ」です。

2神は「ヒルコ」を「葦で編んだ船」に入れて流します。

次に生まれた子供も淡島(淡路島ではなく泡のような物)でした。


写真:大島から臨む「淤能碁呂島」はどこか?の候補地の一つ「沖ノ島」
「沖ノ島」近くの「大島」(福岡県)宗像大社沖津宮遙拝所(沖ノ島を御神体として祀っている)

「高天原」に相談に行く

困った2神は「高天原」にいる「天津神」に相談に行きます。

天津神は太占(フトマニ)に占わせます。

すると太占
「女が先に喋ったのが良くなかった。淤能碁呂島に戻って最初からやり直せ。」
と言いました。

地上に戻った2神は、言われた通り「イザナギ」から「なんて美しい女だ」と声をかけ「まぐわい」をし、次々に神を生むことになります。
(「神生み」はこちらをご覧ください。)

高天原」と「地上」のイメージ(諸説あります)

太占とは

獣の骨に傷をつけて火で焼き、亀裂の入り方で吉凶を判断する卜占(ボクセン)の一種やそれを行う人(神)です。

日本では鹿の肩甲骨を桜の木で焼き、ひびが入った形を見て占っていました

中国では亀の甲羅を焼いて占っていたそうで、古代日本の風俗を記載した中国の歴史書「魏志倭人伝」には「魏人は何かあれば骨を焼いて吉凶を占う。
その様子は冷亀法に似ている。」という記述があります。
奈良公園

「ヒルコ」とは

なぜ「神生み」の物語の最初に「ヒルコ」を登場させたのでしょうか。
そしてなぜ流されてしまったのでしょうか。

多くの説がありますが、ここでは3つ紹介します。

①「ヒルコ」は「日の子」であったという説

ヒルコ」は「日の子」つまり「太陽の子」であったという説です。

その後誕生する「アマテラス」の権威を際立たせるために最初の子(神)を流したという解釈です。

昔から日本各地に「ヒルコ」が流れ着いたとし祀る神社があることから、おそらく「古事記」が編纂された直後から有力視されてきている解釈でしょう。

アマテラス」と双子だったという説やその後「エビス様」になったという説もあります。
(兵庫県にある西宮神社が有名)

「ヒルコ」を祀る 蛭児神社(「日御碕神社」内)(島根県)

②「ヒルコ」は生贄だったという説

ヒルコ」は「古事記」では「水蛭子」という字で書かれる神です。

」は血を吸う生き物、つまり「生贄」を神格化したものではないかという解釈です。

古事記」の「ヤマトタケル」の場面にも海の神の怒りを鎮めるために「ヤマトタケル」の妻が生贄になって海に飛び込む場面があります。

また、地に栄養を与える「肥料」に「」が適しているという側面もあることが生贄説を主張する人の根拠となっています。

③「ヒルコ」は障害児だったという説

中国南部や東南アジアに、人類の始祖となる兄妹の間に最初に不満足な出来の子が出来たという類似の伝承があり、その関わりが指摘されています。

障害かどうかわかりませんが弱かったのだという説です。

はるさん的考察

婚姻の儀」のやり直しについて

婚姻の儀」のやり直しは「国生み」の苦しみと共に日本社会の男尊女卑を表しているでしょう。

(「アマテラス」を象徴的に日本神話体系の中心としているものの「古事記」の主人公は男神である「スサノオ」や「大国主命」や「ヤマトタケル」です。)

私は、この「婚姻の儀」のやり直し神話が日本人に与えたインパクトは遺伝子的に大きいと感じています。

占いをしていると「彼からのプロポーズや告白を待っている」と言う子にお会いすることがあり、令和になっても「告白は男から」という発想は消えていないことを感じます。

遺伝子に組み込まれてしまっているので、草食系とかこじらせ系とか言ってないで、男性には告白をする勇気を持って欲しいものです。


「ヒルコ」について

ヒルコ」に関しては、結論から言うと基本的に③の障害があった(または体が弱かった)という説が有力だろうと思っています。

①の「アマテラス」のライバルであれば、最初からいなかったことにしてしまえば良く、敢えて「生まれたけど流した」などと記述する必要がないので「太陽の子」説には違和感を感じます。

②の生贄説は、文字を見ると納得感がありますが、日本神話にそれほど生贄というものが出てこないことを考えると 違う気がします。

昔は育たない子が多かったことから、子供を亡くした夫婦に
「この後丈夫な子供を産めるかもしれない」
という希望を与えたかったのかもしれません。

そして、(生贄ではなく)亡くなった子を埋めることによって肥料や田畑の守り神となり、翌年豊作になったこともあるでしょう。

また、「船に乗せて流した」という表現は一見すると「捨てた」ように見えますが、昔、日本では海の中に「ワタツミ(海の神)の宮」や「竜宮城」という場所があるかもしれないと思われていました。

もちろん地上の何処かに流れ着いて幸せに暮らした可能性も感じさせます。

ヒルコ」が「亡くなった」とするのではなく、「生きたまま流した」ことにしたのは読者に希望を与える表現なので「ヒルコ」がたどり着いた場所が複数存在するのだと思います。

は神から与えられた恵みの象徴です。

古事記」の「ヒルコ」は「葦船に入れて流し去りつ」という記述に、「ヒルコ」だけでなく「イザナギ」や「イザナミ」や読者への尊敬や優しさを感じます。

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上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇)

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コメント一覧
  1. 不完全なヒルコが生まれて理由が女性から先に話しかけたためとなってしまったことと
    生きたままヒルコを船に乗せてしまったのが
    若い2人の神の考えた決断を上の神様はどう見ていたのやら?と思ってしまいました。
    こんなこと今したら世間が許さないでしょうね。

    • 日本の始まりは酷いことがいっぱいですね。
      たしかに天津神は2神のことをどう見てたんでしょうね。
      一番の下っ端なのだから、流す前に高天原に相談に行けばいいのに。

  2. ヒルコは、今までスルーしていましたが、
    ヒルコ神社があるとは初めて知りました。
    船に流されたと言うのは、
    旧約聖書の十戒の主人公モーゼが、生まれたときに流されたというのに似ています。
    ですから、ヒルコもどこかで優しい人に大事にされてるといいなと、古代に思いを馳せました。
    今回も楽しく拝読しました!

    • ヒルコには生きて幸せになってもらいたいと思う人は多いんでしょうね。
      たしかにモーゼも流されましたね!
      そしてファラオの王女に拾われた!
      ヒルコも優しい人に救ってもらえるといいですね。

  3. 川に流される話は、旧約聖書の出エジプト記、モーゼがナイル川に流されましたし、ギリシャ神話のオルフェウスは八つ裂きにされて川に流されましたね。インドや中国にもこうした話はあるかもしれませんね。本題から外れまして申し訳ありません。

    • ありがとうございます!
      そうなんです!
      育てきれないけど、希望を持って流すんでしょうかね。
      モーゼの場合はわかりやすいですね。
      このような類似性を原型と見るか、話が伝わって来たのだと見るか議論が分かれるところですね。

  4. 元気な子を流さないだろうから、なぜ流されたのかの理由は、私も③のような気がします。二人の思いを最大限よく解釈すると、今のように医学が進歩していなかったころ、育てられるかという不安や断念、自責の念等、いろいろあって葦の船に乗せたのかもしれないですね。前のコメントの方や、はるさんの言うように竜宮や流れ着いた別の土地での幸せを願っていたのでしょうね。
    図解で、あいまいだった高天原と地上の位置関係がよくわかるようになりました。ありがとうございます。

    • ありがとうございます♪
      流すなんて今なら、未必の故意ですけど、神話ですし「ヒルコ」も神なので助かったと思いたいですね。西宮神社あたりに流れ着いていたと思えなくもないです。
      図解、誉めてくださりありがとうございます!
      結構苦労しているので、すごく嬉しいです。

  5. いっちゃんコメント
    すごく面白かったです。
    誘う男と誘う女だったんですね。
    国土の大半の島を生み、沢山の神を生み、イザナミは大活躍ですね。
    火の神を産んで火傷で亡くなったのは哀れでした。
    最初に女性から声をかけたため不具の子が生まれたのはなんともやるせない気持ちになりますが、シンプルに男尊女卑思想が根底にあったかどうかは少し疑問があります。
    卑弥呼や壱与を引くまでもなく、ヤマトは女性の統治の方が戦乱は収まります。
    私はヤマト民族は古来より女系家族で結婚は妻の実家への通い婚が基本と思っています。なのでアマテラスが女神であることはとても自然に感じます。
    原詩、女性は太陽であった。名言と思います。

    • ありがとうございます♪
      男尊女卑という言葉は少し乱暴だったかもしれません。
      ただ、卑弥呼やアマテラスはシャーマン的要素が強く(持統天皇と違って)会社でいう会長や相談役のような存在だった気がします。
      あくまで決定権は少し下の人たちが持っていてトップにシンボル的存在として巫女的存在の女性を置いたような。
      通い婚というのは、男性優位な制度だと思ってます。
      女性は妊娠中や出産後など2年近く動けない最中に、男性はあちこちで、、、笑
      表面的に女性を立てて、男性本位かな?と。
      らいてふさんを持ち出してくれたのが嬉しいです。

  6. いっちゃんコメント
    らいてふさん大好きなんだ。
    ところで男尊女卑について私が思ったことをもう少し説明すると、確かに天皇は男系相続だあひ、近代以前の権力者や政治家で名前が伝わる女性は少ないので、やはり日本には男尊女卑的な風土があるかと思います。
    が、持統や斉明は女性といっても皇女ですが、北条政子も日野富子もいわば民間人。
    後世入ってきた儒教思想や明治以降の思想教育が、より男尊女卑思想を加速させたのでは?と感じています。
    で、例のイザナミの最初語りなんですが、当時の持統と不比等の意思は男系直系への権利承認であり、ここにもその意思が表れているように思います。
    ちなみに壬申の乱で大海=天武は天智の息子を滅ぼして皇位についたけれど、結果的に持統が護りたかった男系の血はしっかり天智の血だったというのが面白い。

    • 儒教思想や、明治以降の思想教育は確かに男尊女卑を加速させましたね。
      男性中心社会と男尊女卑は違いますが、日本女性は主張しない方がかわいいとか、奥ゆかしいとかいう気質が遺伝子レベルで組み込まれている気がします。
      たまに、らいてふさんや田中真○子さんや小池○知事が出てくると、応援する人と同時にアンチが一定数いますよね。
      あと、このブログで宝石を取り上げていて思ったのですが、女性が奥ゆかしいというのは、物凄い贅沢な暮らしをしない済み国民を税で苦しめたり、贅沢品をめぐっての戦争をしないですんだという利点がありますよね。
      日本はヒスイや琥珀や黒曜石くらいしか採れませんが、多少海外から宝石が入ってきているわけで。
      それを女帝や武士の奥様方が欲しい欲しいと主張したら宝石をめぐる戦争があってもおかしくないと思うんです。
      日本の場合、贅沢品が職人の焼き物や螺旋くらいで済んだのは、女性が奥ゆかしかったのと、外に出ない(出さない)文化だったからかな?と感じます。

      先日見たのですが、20代と30代の女性3000人くらいのアンケートがあって。
      自分から男性をご飯に誘ったことがない人が55%でしたよ。
      令和になってもこんなものですね。
      男性が草食だとこの国は滅びます!

  7. 愛子さまの初の会見を拝見してもし男の子だったら違う感じなっていたのでは?と思ってました。日本は男性が優遇されてますね。
    都立高校の入試は1番公平であるべきなのに男子優遇がは改善されてないのが残です。

    • 持統天皇など女帝はいらしたのに染色体?
      の問題でですか?
      日本は男子優遇の国だと世界的に認識されてますね。
      残念です。

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