宝石展などに行くとインド人のお店やバイヤーさんたちを多く見かけます。
また、宝石を調べていると「昔からインドでは護符として使われていました」という記述が多く見られます。
インドの俳優さん達の写真を見ると「重いでしょ!」と言いたくなるほど沢山の宝石を着けています。
このように、インド人にとって宝石は日本人よりずっと身近なものと言えるでしょう。
今回はインド人にとって特に大切な「ナヴァラトナ」という9つの宝石について書いていきます。
「ナヴァラトナ」とは
ナヴァラトナとは
太陽系の9つの惑星とそれを神格化した9人の神であるナヴァグラハ=九曜が割り当てられた9つの宝石が全てあしらわれた装身具のことです。
「ナヴァラトナ」の意味
「ナヴァ」…9つの
「ラトナ」…宝石
つまり9つの宝石という意味です。
「ナヴァラトナ」の宝石
ナヴァラトナの9つの宝石は(一般的に)
ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、真珠、ヘソナイト、イエローサファイア、クリソベリルキャッツアイ、珊瑚
を指し、天災や運命の悪戯を避け加護を願います。
「ナヴァグラハ(九曜)」とは
ナヴァグラハ(九曜 クヨウ) はサンスクリット語で「9つの惑星」という意味です。
九曜のうち七曜は実在する天体で、残りの2つも古代インドでは実在すると考えられていた天体です。
9つの星とその宝石
ナヴァグラハ(9つの惑星)とは
星座を横切る不思議な動きをする惑星(火星、水星、木星、金星、土星)に太陽と月(当時惑星と考えられていた)を加え、さらに日食月食を表す太陽と月の交点羅睺星と計図星です。
ナヴァグラハには対応する宝石があり、ナヴァラトナと呼ばれます。
今でもインド、スリランカ、ミャンマーなどで愛用されています。
9つの惑星と対応する宝石の例 (実際は多くの例があります)
・太陽…ルビー
・月…真珠
・火星…珊瑚
・水星…エメラルド
・木星…イエローサファイア
・金星…ダイヤモンド
・土星…サファイア
・羅睺星(ラゴウ星 ラーフ)…ヘソナイト
・計図星(ケートゥ)…キャッツアイ
羅睺星と計図星
羅睺星と計図星は実在しませんが古代インドでは実在すると思われていました。
月の交点(黄道と白道の交点)の昇交点が羅睺星で降交点が計図星です。
羅睺星と計図星が太陽や月を隠すことで日食や月食が起こると考えられていました。
ナヴァラトナ(宝石)の並べ方
こちら2つの図はNityaさんのページからお借りしました。
(navel night garnet はヘソナイトのことです。)
ナヴァラトナは厳密には惑星の並びと同じ順番で配置するという規定があるそうです。
それはインドには、古来から「宇宙と個とは同一」つまり「梵我一如」の思想があり
宇宙的存在の何かと、個としての自分が同一であるとする考え方です。
宇宙の惑星たちをナヴァラトナとして身につけることで、体を宇宙と同じ状態にするという意味が込められているのです。
インド占星学も宝石と繋がりがあり、インドでは生まれた時から守護となる宝石が決められるそうです。
宝石がただの装飾品ではないことがわかるとインド人の宝石に対する思いの深さを理解できますね。
九曜の思想は伝わっており、細川家などの家紋に使われています。(九曜紋)
ナヴァグラハと曜日の起源はカルデア人
星座はメソポタミア南部に定着した遊牧民族のカルデア人が夜寝ずに羊の番をしながら、星々を線で繋いで名前を付けたのが始まりと言われています。
(紀元前10世紀頃・羊飼いだったかどうかは諸説あります)
カルデア人は紀元前7世紀ころに新バビロニア王国を建国した民族です。
カルデア人は天文学や占星術を得意とし、天文観測により作物の収穫期や洪水を予測していました。
ナヴァグラハもインド発祥ではなくカルデアからインドやギリシャに伝わり、ローマ帝国や中国、日本へと広がりました。
今も使われる曜日もカルデア人の天文観測を起源とする説があります。
カルデア人はイラク人などと混ざり合ってしまい、民族として存在しないようですが、私たちの生活に多大な影響を与えてくれていますね。
と思い調べてみたらカルディはコーヒーの苗木を見つけたエチオピアの山羊飼いのお名前でした!☕️
カルデア人が観測した天文学からナヴァグラハが生まれ、インドに伝わり宝石と結びつきナヴァラトナが誕生しました。
インド人がよく着けている色とりどりの美しいアクセサリーは宇宙を表す護符の意味があったのですね!