(58)『古事記』「アマテラス」による地上統治計画②「アメノホヒ」
「アマテラス」の息子「アメノホヒ」『地神五代記』

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「アマテラス」による地上統治計画②「アメノホヒ」

これまでのあらすじ

オオクニヌシ」の国作りが終了するのを待っていたかのように「アマテラス」は
葦原中国は自分の子に治めさせたい。」
と言い出しました。

アマテラス」と「スサノオ」のウケイによって生まれた長男「アメノオシホミミ」を派遣しようとしましたが戻って来てしまいました。

オモイカネ」などと相談し、次に送った神は「ウケイ」によって生まれた次男「アメノホヒ」です。

しかし「アメノホヒ」は「オオクニヌシ」に取り込まれ、三年経っても音沙汰がありませんでした。
「ウケイ」によって生まれた「アメノホヒ」

「アメノホヒ」とはどんな神か

古事記」における漢字表記は「天菩比神」です。

菩比」は全てにおいて秀でているという意味です。

つまり「アメノホヒ」は「天の全てにおいて秀でた神」でした。

古事記」を読むと「オオクニヌシ」にへつらって何もしなかったように見えますが、元は大変優秀な神だったのでしょう。

また、成果を出さなかったにも関わらず「アマテラス」からのお咎めがなかったことから考えると愛されキャラだったと考えられます。

尚「国譲り」が完遂した後、「アメノホヒ」は出雲の国造(クニノミヤツコ)に任命されます。

国造とは古代日本の地方を治める官職で、軍事権、裁判権を持っていました。

「アマテラス」が「アメノホヒ」に課した役割

ここで大切なことは「アマテラス」が葦原中国を武力で制圧したかったか、話し合い(軽い脅しも含む)によって譲らせたかったかということでしょう。

古事記」では「言趣けむ(コトムケム)」という表現を使っています。

つまり、「アメノホヒ」に地上にいる「荒ぶる神々」と「話し合いをして説得せよ」と命じたということなのです。

このことから「アメノホヒ」が頭脳明晰な官僚的な存在であったことがわかります。

(武力で制圧するのであれば後に出てくる最強の神「タケミカヅチ」を最初から派遣すればいいのです。)

「アメノホヒ」は何故「オオクニヌシ」に「媚び付きて」しまったか

オオクニヌシ」はこれまで、イジメにあったり様々な試練を与えられた際にも国作りの時も常に誰かに助けてもらえる神です。

女性にもモテる人(神)たらしなのでしょう。

高天原で生まれ育った真面目な優等生は、魅力的な「オオクニヌシ」や「オオクニヌシ」の周りにいる美女、お酒やご馳走を前に「説得する」という使命を忘れてしまったのだと思われます。

もっとも「アマテラス」が3年もじっと待っていたとは思えないので、もっと短い期間でしょうけど。

「出雲国造神賀詞」では活躍する「アメノホヒ」

出雲国造神賀詞」というものがあります。

出雲国造神賀詞」は、出雲大社の当主でもあった国造が天皇家に永遠の忠誠を誓い、神宝などを献上する儀式の際、天皇に対して奏上するものです。

奈良時代と平安時代にこの儀式が行われたという記録が残っています。

その「出雲国造神賀詞」によると「アマテラス」に葦原中国の様子を報告するよう命じられたアメノホヒ」は地上を駆け巡り観察して高天原に報告しに行っています。

そして「アメノホヒ」の息子「アメノヒナドリ」と剣神「フツヌシ」を地上に派遣し、地上を平定させたということになっています。

出雲国造は「アメノホヒ」を祖神としていますから「アメノホヒ」の活躍を誇張しているようにも見えますが「古事記」にわざわざ「何の報告もなかった」と書かれていることと比較するとかなり印象が違います。

はるさん的補足
「アマテラス」の直系「出雲国造」

アメノホヒ」を祖神とし出雲大社の祭祀を司っている出雲国造家(イズモコクゾウケ)は今も続く家柄です。

現在は84代の千家尊祐氏が出雲国造で出雲大社宮司となってらっしゃいます。

その息子さんの国麿氏は典子さまとご結婚されました。

その昔8世紀初頭に律令制度が整えられ、諸国の国造は新しい役職である郡司や国司に変わりましたが 「出雲国造」は生き残り現在に至っています。

出雲国造神賀詞」を見ると出雲の神々が出てきますが「古事記」とは大きく異なる神話が語られています。

「ウケイ」によって生まれた「アメノホヒ」は「アマテラス」の子とされる


アマテラス」の息子「アメノホヒ」が活躍する一方、「古事記」では出雲の英雄として描かれている「スサノオ」は登場しません。

このことから「出雲国造神賀詞」は出雲国造が「アマテラス」の直系の末裔(身内)であることを強調していると解釈することができます。

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