(29)『古事記』の五穀誕生神話「オオゲツヒメ」・神の定義
「スサノオ」と「オオゲツヒメ」
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(29)『古事記』の五穀誕生神話「オオゲツヒメ」・神の定義

これまでのあらすじ

イザナギ」のによって生まれた「スサノオ」は「ウケイ」によって一旦高天原に残ることを許されました。

ところが乱暴な振る舞いを繰り返してしまい、そのせいで「アマテラス」が岩屋にこもってしまいました。

スサノオ」は財産没収、髪を抜かれ爪を剥がされ、高天原から追放されました。

地上への道中、お腹が空いた「スサノオ」

神々から制裁が下され、高天原を追放された「スサノオ」は地上へ降りる道中「オオゲツヒメ」と出会います。

空腹だった「スサノオ」は食べ物を求めます。

オオゲツヒメ」は鼻・口・尻から食べ物を出して「スサノオ」に献上しました。

それを見た「スサノオ」は「汚い!」と怒り、「オオゲツヒメ」を殺してしまいました。

すると殺された「オオゲツヒメ」の遺体からさまざまなものが誕生しました。

頭から、、、蚕
両目から、、粟
鼻から、、、小豆
陰部から、、麦
尻から、、、大豆

これらを「カミムスビ」が種にして「スサノオ」に持たせてあげました。
(この件では「スサノオ」に罰は下されません。)

これが「古事記」における「食物起源神話」です。

 とても似た話が「日本書紀」にあります。
「日本書紀」では殺してしまうのは「ツクヨミ」で
食べ物の神は「ウケモチ」です。
そして使者が種を作り「アマテラス」に献上します。


参考記事

「オオゲツヒメ」とは

イザナギ」と「イザナミ」の娘の1人です。

「古事記」での表記

古事記」では「大気都比売神」と表記されています。

名前を分解してみましょう。

オオ、、、美称
ゲ、、、、食べ物、穀物
ツ、、、、連体助詞

つまり「オオゲツヒメ」は
大いなる食べ物の神」という意味です。

「古事記」に登場する他の場面(2箇所)

古事記」には「オオゲツヒメ」という神はもう2箇所登場します。
(ただし②に関しては同じ神かどうかはわからないとされています。)

①「イザナギ」と「イザナミ」の「国生みと神生み」の場面

まず「国生み」の場面で淡路島の次に生まれたのが四国です。

四国は四つに分かれ、その一つが「粟国」で「大宜津比売」という、と書かれています。

そして神生みの場面では「カグツチ」の直前に生まれたのが「大宜津比売神」です。

この場面では「生まれた」こと以外の記述はありません。

②「スサノオ」の子「オオトシノカミ」との間に子供を産む

後に「オオトシノカミ」という穀物の神が登場します。

オオトシノカミ」との間に「大気都比売神(オオゲツヒメ)」が「ワカヤマイクノカミ」を生んだという記述があります。

漢字も同じですが、同一の神と考えるのは矛盾が多そうですね。

オオトシノカミ」については後日詳しく解説します。

はるさん的補足 「神」の定義

日本には八百万の神がいます。

古事記」にも多数の神が登場しますがこれまでの「スサノオ」のように、悪いこともしてしまう神が存在します。

一神教と違い「」は悪事もするのです。

では何を「」と呼んでいるのでしょうか。

「鬼子母神の御神木」(東京都)

本居宣長の定義

最も有名なのが本居宣長の定義です。

宣長は「神」の語源は不明としましたが「」を以下の3つに定義付けました。

①天地や自然の全てに優れた徳があり、畏きもの。

優れた徳には善、功、悪、奇が含まれ、それらに対して凡人より優れた力を持っている存在

要するに、善悪や強弱に関わらず畏怖すべき相手が「」である。


人格化した「神」の存在


③死後「」として祀られる人間そのもの

古事記伝の「神の定義」の箇所 宣長筆

定義の解説

①宣長は悪いものや奇(アヤ)しいものでもその程度が他と比べてはなはだしければ「神」だと定義付けました。

ですから「毎日千人殺す」と言った「イザナミ」も、乱暴な振る舞いをした「スサノオ」も「」なのです。

②神となっている、山や木などが多く存在しますね。

また、台風や地震や雷も「」となる場合があります。

徳川家康乃木希典など、神として祀られる実在の人物のことです。

」をこのような定義と捉えると「日本神話」が読みやすくなり、日本中にさまざまな神さまが祀られていることも納得できるのではないでしょうか。

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