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「天地開闢(テンチカイビャク)」とは
「天地開闢(テンチカイビャク)」とは簡単に言うと、「天と地が分かれて世界が始まること」です。
開闢とは開き分かれるという意味で、「古事記」は(編纂の経緯の説明の後)
「天地(アメツチ)初めて発(ヒラ)くる時に、、、」
と始まります。
混沌としていた天と地が分かれて世界が始まると言う思想は、中国の神話から借りたもの(「古事記伝」本居宣長)と考えられています。
『日本神話タロット 極参』天地開闢(世界)
「天沼矛(アメノヌボコ)」「世界」のカードの意味
・正位置
成功、成就、完成、完全
・逆位置
低迷、破産、未完成
『日本神話タロット 極参』天地開闢 (世界)「天沼矛」の解説文(写し)
天地開闢により様々な神が生まれましたが、そこには大地がありませんでした。神世七代の兄妹であるイザナギとイザナミは、天浮橋(アマノウキハシ)に立ち、アメノミナカヌシより授かった「天沼矛」を海に突き刺し、まだ形を成していない大地をかき混ぜ、地上を作ります。
「私の体には飛び出たものが一つある」
「私の体には凹んでいる部分が一つある」
「ではそれを合わせてみよう」
と言い二柱(フタハシラ イザナギとイザナミのこと)は合わさります。
一人ではできなくても、二人ならば完成することもあるのです。
参考記事
天地開闢(テンチカイビャク)で現れた神々
別天津神(コトアマツカミ)
神世七代(カミヨナナヨ)
天浮橋(アメノウキハシ)とは
イメージ図(諸説あります)形状はわかりませんが、天空に浮き架けられた橋で、高天原と地との行き来に使う他、高天原から地を覗くことができたようです。
ただし、地から高天原は覗けないようですね。
天沼矛(アマノヌボコ)とは
「天沼矛」とは天津神一同が「イザナギ」と「イザナミ」に「国生み」を命じるにあたって与えた矛です。
「イザナギ」と「イザナミ」は天浮橋に立ってその沼矛を指し下ろして最初の島「淤能碁呂島(オノゴロジマ)を作ったとされています。
はるさん的補足
江戸時代まで「古事記」は「日本書紀」より冷遇されていました。「日本書紀」は中国の伝統思想である陰陽説を基調とし、中国との対外的な関係を重視した書であり正統的な漢文体で書かれています。
いわばこの時代のグローバルスタンダードを目指した書物です。
そのため鎌倉時代以降には、儒学、密教、陰陽五行思想、天台神道などの知識によって大きく読み替えられる教科書的な書物となりました。
対して「古事記」は国内向けに書かれています。
いわばグローバリズムによって失われるローカルアイデンティティを確保しようという書物です。
そのため江戸時代までほとんど無視された存在でした。
しかし江戸時代後期に本居宣長(1730〜1801)が現れて「古事記」の評価が急激に上がります。
宣長は「古事記」こそ、中国的発想によって改変された「日本書紀」から見えてこない「日本」の純正なる「古つ世(サキツヨ)」の姿を伝えていると主張し、を読み解ける人がいなくなっていた上代日本語の解釈を35年かけて行いました。
宣長の功績は、時に間違った形で国民国家のイデオロギーに使われてしまうこともありました。
しかし宣長の真の功績は「古事記」に描かれている神話を一般民衆の生き方の規範としたこと、
古代人の「まごころ」から、そこに日本文化においての美意識や価値観である「もののあはれ」を発見したことでしょう。
こうして「古事記」は多くの人に親しまれる物語となったのです。
今でも多くの研究者が「古事記」の研究をしています。
しかし、鎖国という状況の下、限られた書物から生み出された宣長の「古事記伝」の内容が7割方正しいと言われています。
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