(80)『日本神話タロット』鏡ノ小姓「ホオリ」トヨタマビメの出産
「鏡ノ小姓」 カップのペイジ

上巻の記事一覧

これまでのあらすじ

兄「ホデリ(海幸彦) 」の釣り針をなくして怒られた「ホオリ(山幸彦)」は「ワタツミの宮」に探しに行きました。

そこで「ワタツミノカミ(綿津見神) 」の娘「トヨタマビメ(豊玉毗売命) 」と出会い恋に落ちます。

ホオリ(山幸彦)」は「ワタツミの宮」に3年間いましたが、地上に帰り「ワタツミノカミ(綿津見神) 」に言われた通りに呪いをかけながら「ホオリ(山幸彦)」に釣り針を返すと「ホデリ(海幸彦)」は不幸になり、「ホオリ(山幸彦)」に服従することを約束しました。

『日本神話タロット 極参』 
鏡ノ小姓「山幸彦 ホオリ」(カップのペイジ)

日向三代、海、山の神の系譜

鏡ノ小姓(カップのペイジ)の意味

正位置

愛情が深い、イマジネーション、直感、恋の始まり

逆位置
誘惑、弱気、依存、悲観、甘え

『日本神話タロット 極参』
 鏡ノ小姓「山幸彦 ホオリ」(カップのペイジ)の解説文(写し)

ホオリ(山幸彦)」は「トヨタマビメ」との間に子をもうけますが、海の民は出産時、人の姿でなくなるため、「ホオリ(山幸彦)」を産屋から遠ざけました。

しかしどうしても気になった「ホオリ(山幸彦)」は産屋を覗いてしまいます。

するとそこには「トヨタマビメ」の姿はなく、大きな和迩(サメ) が子を産んでいました。

事情を知った「ホオリ(山幸彦)」は気にしませんでしたが、姿を見られたことに傷ついた「トヨタマビメ」は子を残してどこかへ去って行きました。

参考記事

「古事記」におけるこの場面

トヨタマビメ」は「ホオリ」の元を訪ねて来て言いました。

トヨタマビメ
私は身籠もっていましたが、いよいよお産をする時が来ました。
天津神の御子を産むのに、海原で産むのは良くないと思い、ここに来ました。

そこで海辺の渚に、鵜の羽を萱草の代わりにひいて産殿(うぶや)を作りました。

ところが、産殿の屋根が出来上がらないうちに「トヨタマビメ」は産気づいてしまい、慌てて産殿に入りました。

そして「ホオリ」に

トヨタマビメ
すべての他国の者は、お産の時に故郷の姿になって子を産むものです。
ですから私も本来の姿になってお産をします。
決してわたしをご覧にならないでください。

と言いました。

しかし、この言葉を不思議に思った「ホオリ」は密かに覗いてしまいます。

すると「トヨタマビメ」は和迩(サメ) の姿になってのたうち回っていました。

ホオリ」は驚きおののいて逃げ出してしまいます。

トヨタマビメ」は和迩(サメ) の姿を見られたことを恥ずかしく思い、

トヨタマビメ
私は海の道を通って行き来しようと思っておりましたが、恥ずかしいので帰ります。

と言い、生まれたばかりの御子を置いて「ワタツミの宮」に帰ってしまいました。

御子は「ウガヤフキアヘズ(正式名称:天津日高日子波限建鵜葺草不合命アマツヒコヒコナギサタケウガヤフキアヘズノミコト) 」と名付けられます。

トヨタマビメ」は「ワタツミの宮」に帰りましたが、次第に夫である「ホオリ」と息子を思う気持ちが強くなり、御子のお守り役として、妹の「タマヨリビメ(玉依毘売) 」をよこしてこのような歌を「ホオリ」に送りました。

トヨタマビメ
赤玉は 緒(オ)さへ光れど
白玉の 君が装いし 貴くありけりといひき

(琥珀はそれを貫く緒まで光り輝いて麗しい物です。
それにも増して真珠のように光り輝いたあなた様のお姿の貴さが、忘れがたいです。)

ホオリ」は次のような歌で答えます。

ホオリ
沖つ鳥 鴨どく島に
我が率寝し(イネシ) 妹(イモ)は忘れじ 世のことごとに

(沖に住む鴨の寄る島、かの遠い海神の宮に、私がともに寝た麗しい愛しい姫を、1日も忘れることはありません。
私の生きる限りは。)

この御子「ウガヤフキアヘズ」は彼のオバにあたる「タマヨリビメ」と結婚して4柱の御子を産みました。

4番目に産まれた御子が「神武天皇」となります。

「トヨタマビメ」が出産した地
とされる「鵜戸神宮」

写真は「トヨタマビメ」が「ウガヤフキアヘズ」を産んだとされ、現在は「ウガヤフキアヘズ」を祀っている「鵜戸神宮」です。

鵜戸神宮(宮崎県日南市)

「タマヨリビメ」についての記事

日向三代(ヒムカサンダイ)

ニニギ(邇邇芸)」、「ホオリ(山幸彦)」、「ウガヤフキアハヘズの三柱および
それらの神々の時代をを日向三代(ヒムカサンダイ)と呼びます。

皇室の祖が日向(ヒムカ) にあった時代です。

ニニギ

ニニギ」は高く積み上がった稲穂を意味する高千穂に降り立ったことから「穀物の霊=穀霊」とされています。

山の恵みを司る「山の神オオヤマツミ」の娘と結婚 し豊穣をもたらせます。

ホオリ(山幸彦)

火遠理(ホオリ)」の火は「穂」という意味でもあるので、「穀霊」とされています。

そして海と水を司る「海の神ワタツミ」の娘と結婚します。

山の神である山幸彦」が「海の神」と結合し、力を得ることで、穀霊はさらに豊穣をもたらせます。

ウガヤフキアヘズ

ウガヤフキアヘズ」に関しては
古事記」「日本書紀」ともに、これと言った記述はありません。

しかし「ウガヤフキアヘズ」も「穀霊」とされています。

記述はありませんが、豊穣をもたらせる神だったことでしょう。

このように日向三代は穀霊の成長を語る一面を持っています。

いよいよ上巻が終わりに近づいてきました。

日本の建国、国生みに穀物が欠かせないことを示した場面と言えるでしょう。

はるさん的補足
世界中にある
「見るなのタブー」
「メルシナ型神話」

何かしている所を「見てはダメ」と禁止されていたにもかかわらず、破ってしまい、恐ろしい目にあったり、相手が去ってしまうというお話しは世界各国にあります。

トヨタマビメ」のように異類の者の本当の姿を見てしまい、それが原因で
別れてしまう
という話しを「メルシナ型神話」と呼びます。

フランスの伝説に登場するメリュジーヌからそのように名付けられました。

多くの神話に共通するものの一つです。

これまでに完成している記事

古事記の他の記事

古事記の他の記事はこちらからご覧ください。

上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇)

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