『雄黄(石黄)』「オーピメント」黄色や金色の顔料として使われていた鉱物
Screenshot
雄黄

雄黄 (ユウオウ・オオウ) はヒ素の硫化鉱物です。

黄色や金色の顔料として使われていましたが毒性があるため、現在は使われなくなりました。

日本でも青森県などで採れる石です。

雄黄 (石黄)について

雄黄(石黄)は低温熱水脈や温泉地や鉛、金、銀の鉱山などで、見つかります。

類縁種の鶏冠石辰砂方解石を伴って産出されることが多いです。

雄黄 (石黄)の名前と英語名

同じところで産出されることが多いためか、成分もよく似ている鶏冠石と名称も混乱しています。

大変わかりにくいのですが

日本では石黄 (As2S3) を雄黄とよびます。

中国では鶏冠石 (As4S4 )を雄黄とよび、石黄を雌黄(シオウ)とよびます。

薬品などの中国の文献を和訳する時に「雄黄」とそのまま訳してしまっていることもあります。

上の写真に石黄 (金平糖石)と書かれていますが、

金平糖石は自然ヒ素の結晶放射状に集合して球体となった物を指します。

英語名はオーピメントです。

古代ローマ人は雄黄 (石黄)を使って建物や彫像を鮮やかな黄金色に塗装したので

プリニウスは「博物誌」に 「auri pigmentum:金色の塗料」の名で記録し、オーピメントの語源となりました。

はる
日本でも
鶏冠石」をリアルガー
石黄」をオーピメント
と呼ぶようにした方がわかりやすいのに、、、
と思いますが「雄黄」という呼び名が流通しています。

雄黄 (石黄)の成分

雄黄 (石黄) はヒ素の硫化鉱物です。

化学式は

As2S3

と表されます。

雄黄 (石黄)の匂い

ヒ素が含まれるのでニンニク臭がします。

特に点火すると強烈なニンニク臭になります。

雄黄 (石黄)の硬度

モース硬度 2 とても脆い



💎参考記事

石の硬度を表す「モース硬度」 

雄黄 (石黄)の劈開

一方向に完全 (フレーク状に剥がれる)

💎参考記事

鉱物の割れ方「劈開」

雄黄 (石黄)の光沢

樹脂光沢 (断面)

金剛光沢



💎参考記事 

金属や石の印象を左右する7つの「光沢」 

薬物として使われていた雄黄 (石黄)

正倉院

正倉院に卵型の雄黄 が「」として保管されていますが成分は「リアルガー」と記載されています、、、鶏冠石石黄どちらかわからないということでしょうね。

紀元1〜3世紀ころに編纂されたと言われる中国の医学書「神農本草経(シンノウホンゾウキョウ)」に「雄黄・雌黄(シオウ)」が記されており、

「肛門のただれに雄黄を火で炙って出た煙で燻蒸すると治る」という記述があるそうです。

江戸時代にも梅毒やジフテリアや破傷風の治療薬として使われていたという記載があります。

しかし、今日では漢方薬も含め、雄黄 (石黄)は薬としては使われていません

顔料として使われていた雄黄 (石黄)

雄黄色

雄黄 (石黄)は黄色顔料として広く利用されていました。

日本でも「続日本紀」に雄黄が顔料として使われていたことが記されています。

雄黄を荒くすり潰すと柱状の結晶片が凝集して薄い層を作り、多量の光を反射して明るい黄金色になります。

豪華な印象を与えられるので、中世ヨーロッパの写本装飾師の間で「オーピメント」と呼ばれ、特に珍重されました。

現代では毒性から顔料としての利用はほとんどありませんが、「雄黄色」という色の名前が残っています。

鶏冠石から作られるオレンジ色は光が当たると変色しがちですが、雄黄色は光に対して安定しています。

「名前」のところに中国で雄黄 (石黄)を「雌黄」と記すと書きましたが

日本では「雌黄」は藤黄という東南アジア原産のオトギリソウ科フクギ属の植物の樹皮から採れる透明感のある黄色い染料のことを指します。

💎参考記事

鉱物からつくる岩絵具 (顔料) どんな鉱物が絵具として使えるか

ティツィアーノのバッカスとアリアドネ

バッカスとアリアドネ(1522年)

イタリアのルネサンス期の画家ティツィアーノ・ヴェチェッリオは「バッカスとアリアドネ」でラピスラズリや雄黄(石黄・オーピメント)を使いました。

どの部分か書かれている説明書は見つからなかったのですが、バッカスが投げた、左上の星の冠でしょうか?

はる
ティツィアーノは色彩画家と言われていました
毒性の顔料を使いましたが大変長命でした 

ちなみに

フェルメールラピスラズリからつくられる鮮やかな青「ウルトラマリン」を使ったことは有名ですが、黄色は残念ながら雄黄ではなく鉛錫(エンシャク)酸塩だということがわかりました。

雄黄 (石黄)の石言葉

石言葉は見当たりませんでした

雄黄 (石黄) 誕生日石

現在の誕生日石には選ばれていません。

雄黄 (石黄)の主な産地

雄黄(石黄)は

・中国🇨🇳

・ペルー🇵🇪

・ロシア🇷🇺

で産出されます。

日本でも北海道や青森県や福井県で見つかっています。




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コメント一覧
  1. 拝見させていただきました。
    別名「金平糖石」。この様な危険の鉱物に甘いお名前は…
    確かに漢方薬の生薬にも用いられている様な覚えもあります
    モース硬度2は大変脆く何かしら擦れる度に猛毒の粉塵は空気にも漂いますね
    洋画に使用されました雄黄は目を凝らし確認適いました…
    此方の僅かな顔料の為に用いられることもあるのですね
    因みに鉛錫酸塩とは鉛と錫成分なのでしょうか
    錫であれば日本にも鉱山はありその地より鉱物も産出されているやも知れませんね。

    • ありがとうございます♪
      金平糖石を見た時「可愛い!」と思ってしまいましたが口にしたら大変です。
      見た目から錬金術師に使われていたと思いますが、黄金や不老不死を求めて犠牲になった人は多いでしょうね。
      ティツィアーノの名画に使用されたおかげで今では使われなくなってしまったオーピメントの名前が残りました!
      鉛錫酸塩は鉛と錫の合金(つまり加工された物)から作る黄色の無機顔料と呼ばれる物のようです。
      錫は日本でも採れますね!

  2. 石黃は、とても鶏冠石と似ていますね。硫化鉱物でないカルサイトも伴って産出されるのは面白いです。
    雄黃色は安定した色なのに、雄黃=石黃には毒性があって、残念です。
    しかし、石黃が顔料に使われなくなっても、色の特徴が広く知られて、名前として残ったのですね。
    現在は用途は何かあるかしら?

    • ありがとうございます♪
      雄黄と鶏冠石は化学組織も殆ど同じで一緒に産出されたら混ざり合っていそうですね。
      毒性があると絵の具を使う人もですが作る人が一番犠牲になったのかもしれません。
      ティツィアーノの名画に使われたことで顔料としての名前を残せたことは雄黄にとっては幸いでした。
      今は火薬にも使われていないようですが、樹脂加工されたブレスレットを売っていました。

  3. 「雄黄(石黄)」は、毒性有りと思って見るからかもしれませんが、見るからに毒々しいですね。色は安定のオレンジ色で、確かに鶏冠石から作られる色とよく似ています。
    雌黄色は、より明るいレモン色ですね!
    「金平糖石」と呼ばれる自然ヒ素の硫化鉱物は、臭いもニンニク臭だし、なかなか強烈な印象を受けました。それにしても、顔料だけでなく薬として使われていたとは、昔の人はたくましいです‼︎

    • ありがとうございます♪
      同じような色合いやもインペリアルトパーズなどは他色ですが雄黄は自色なので石そのものにしっかりと色がついてます。
      そのようなことも毒毒しさを感じさせる要因となっているのでしょうね。
      硫化鉱物に金平糖石と命名するのもなんだかな?と思いますが、匂いがあっても薬になるかも?と挑戦する人がいるというのが面白いですね。
      荒くすり潰して金色になるということで、錬金術には使われそうですからそこからの不老不死の薬になるかもという発想かもしれませんね!

  4. こんばんは、拝読させていただきました。
    雄黄に雌黄・・中国と日本で呼び名が違う、というかごっちゃになってしまいそうなのがなんともですが、当時の人々には区別はついていたのでしょうか。あとごっちゃになってしまわなかったのかな、とかもありますが。
    それにしても、絵画の中で使われている、ぐらいならばまだしも、建物の塗装などに使ってしまったのでは、外見はカッコいいけど(今ふうに言うなら「バエる」ですね)毒にあてられることもありそうです。
    でもはるさんがアップして下さった鉱石のお写真を見ると、不思議に心惹かれる感じがあります。毒・やばいやつには心惹かれる何かがあったりするのでしょうか(^◇^;)

    • ありがとうございます♪
      雄黄と雌黄は一緒に発掘される場合が多いわけですから区別ははっきりとはついていなかったと思います。
      でも、「違う2つの鉱物」だということは分かる人にはわかっていたようです。
      紀元前から身近な石として顔料にも薬にも(毒殺にも)使われていましたし、錬金術師が関心を示していたことと思われます。
      金色の柱に塗るとバエたでしょうね!
      日本の鳥居や大仏も同じで働く職人さんたちの健康問題は劣悪だったと思われます。
      日本では租庸調の「庸」で労働に行ったら帰って来ない、、、ことも多かったという記録もあるようです。
      何億年もかけて作られた鉱物は内包物やら土壌に含まれる元素を取り込んで魅力的ですね!
      鶏冠石の方は毒のある曼珠沙華の色と何となく似ているように思えます。

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