『鶏冠石』(リアルガー)  毒にも薬にも顔料にも使われてきた鉱物
鶏冠石

鶏冠石 (ケイカンセキ・リアルガー)はヒ素と硫黄の化合物です。

中世ヨーロッパでは毒殺☠️するために鶏冠石からヒ素を作るのが定番とされていました。

一方、アーユルベーダや漢方では解毒剤や殺菌の薬の原料に使われています。

はる
植物からもヒ素は採れますが毒のパワーは月日の経過で劣化します。
しかし鉱物薬のパワーは損なわれることはないので鶏冠石から生成されるヒ素は重宝されたそうです。

⚠️鶏冠石はヒ素を含むため、素手で触ったり、粉末を吸い込んだりすると健康被害をもたらす可能性があります。

鶏冠石について

鶏冠石

鶏冠石の名前の由来と別名、英語名

見た目が鶏のトサカ🐓に似ていることから鶏冠石と平賀源内が命名ました。

英名の「リアルガー」はアラビア語で「粉末」という意味の「rahj al ghar」が由来です。

硫黄 (サルファー)が含まれるので「ルビーサルファー」とも呼ばれます。

また、中国や漢方薬では雄黄 (ユウオウ)と呼ばれています。

鶏冠石の成分

鶏冠石はヒ素の硫化鉱物です。

💎参考記事

「鉱物はどのように分類するか」化学組織から分類する方法と種類

化学式は

As4S4

と表されます。

鶏冠石の匂い

ヒ素はニンニク臭がします。

鶏冠石に「ヒ素」が含まれるため、鉱物ですがニンニク臭がします。

鶏冠石の硬度

モース硬度 1.5~2


💎参考記事

石の硬度を表す「モース硬度」 

鶏冠石の劈開

劈開は良好

💎参考記事

鉱物の割れ方「劈開」

鶏冠石の光沢

鶏冠石

・樹脂光沢

・ガラス光沢


💎参考記事 

金属や石の印象を左右する7つの「光沢」 

鶏冠石の色

鶏冠石は、通常、鮮やかな赤からオレンジ色をしています。

多色性があり黄色、茶色、灰色がかった色に見えることもあります。

鶏冠石の色は、成分に含まれる硫化ヒ素の量によって決まります。

鉱物の多色性とは

(同じ光源で) 宝石を傾けたり見る角度を変えた時に、

違う色が見える性質です。

顔料として使われる鶏冠石

鶏冠石色

古代からルネッサンス時代まで、地中海地域から中国に至るまで、あらゆる文化に鶏冠石は顔料として使われてきました。

鶏冠石を粉末にすると上の写真のようなオレンジ色になります。

ただし空気中の酸素と光の影響で鶏冠石の粉は黄色く変色してしまうことがあります。

日本でも鶏冠石は採れるので日本画の顔料として使われましたが

非常に毒性が強いことと、合成顔料が発達したことにより現在では天然顔料の「鶏冠石」はほとんど使われていません。

💎参考記事

鉱物からつくる岩絵具 (顔料) どんな鉱物が絵具として使えるか

鶏冠石入りのお酒

中国では端午の節句の邪気祓いとして、酒に鶏冠石を混ぜた「雄黄酒」なるものを少し飲むことがあるようです。

ただし、嘔吐や下痢の症状がでることが多いので最近は飲むのではなく、

虫除けや除菌、病気の予防のために部屋に「雄黄酒」を撒くのが習慣になってきています。

鶏冠石の石言葉

身に付けられない石のせいか、石言葉は特にありません。

鶏冠石 誕生日石

現在の誕生日石には選ばれていません。

鶏冠石の主な産地

鶏冠石は

・中国 🇨🇳

・チェコ共和国🇨🇿

・ドイツ🇩🇪

・日本🇯🇵 (群馬県西の牧鉱山、青森県恐山、北海道手稲鉱山など)

・ペルー🇵🇪

・ルーマニア🇷🇴

・スロバキア🇸🇰

・スイス🇨🇭

・アメリカ合衆国🇺🇸

などで産出されています。




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コメント一覧
  1. ヒ素はニンニク臭がします。

    鶏冠石に「ヒ素」が含まれるため、鉱物ですがニンニク臭がします。

    との事ですが、ヒ素がニンニク臭するのを初めて知りました。

    中世ヨーロッパでは毒殺☠️するために鶏冠石からヒ素を作るのが定番とされいたとは…なかなか物騒でこれまた初めて知ることばかりでした。

    いつもはるさんのブログでは知らない事ばかりで勉強になります!

    • ありがとうございます♪
      ヒ素の匂いなんて知りませんよね
      私も知りませんでした
      ヒ素が食事に含まれていると銀食器の場合、黒くなるそうです。
      だから銀食器が好まれて使われていたそうです。
      ヒ素は体に残る(証拠になる)ので今は殺人には向かないと言われているそうです。

      • ヒ素が石から取れるとは〜。サスペンス劇場の題材になりそうな素材!ニンニク大好きなので、是非匂いを嗅いでみたい!
        写真の真っ赤な色が真紅の薔薇を想起させます。
        危険な美しさを纏う鶏冠石❤️

        • ありがとうございます♪

          恐ろしいことに使われてたでしょうね
          ヒ素は体内にのこってしまうので今では殺人に使われることはほとんど無いようです
          真っ赤な薔薇もちょっと危険な感じがしますね。
          私は毒繋がりで曼珠沙華を連想しました。

  2. この度は興味深き事柄は並ぶように記されておりますね
    ・死にも病にも至る鉱物を鉱石名として認めている事
    ・遺伝子物質ではないにもかかわらず匂いを発します事
    ・顔料や酒食とし生活に密接されている事
    最も危険な鉱物と云う事もあり誕生日石に含まれない事に納得です
    モース硬度は非常に弱く簡単に削り悪用もされやすいですね…

    • ありがとうございます♪
      鶏冠石は変わった鉱物ですが、
      毒がある鉱物は他にも辰砂 (朱色や水銀の原料となる)や輝安鉱などがあります。
      匂いがある鉱物は他にパイライトやマーカサイトがあります。いずれも硫化鉱物なので硫黄の匂いがします。
      マーカサイトは特に昭和に流行ったのでアンティークショップの匂いマーカサイトだと思っていいと思います。
      鉱物を今はあまり食べないかもしれませんが、水晶は薬として扱われていました。
      今もシリカ水があるように、お腹にいい?とされていたようですよ。

      おっしゃる通り鶏冠石は簡単に削れるので、使おうと思えば簡単だったでしょうね!
      今も鉱物屋さんに売っているのが怖いですが、ヒ素は体内に残るので司法解剖が発達した昨今は殺人には向かないようです。
      この写真も私物ではありませんから安心してください。笑

  3. こんばんは、聞いた事のない石(いや展示で見てるはずなんですけど)でしたが、宝飾ではなく顔料や薬(毒)に使われるものだったのですね。
    劈開面のガラス光沢には心惹かれるものがありますが、反応性はまあまあ高そうだわ割れやすそうだわ(モース硬度1.5とか言うと相当割れやすそうですね)おまけに毒性が強そうだわ。。そんなだったらとてもじゃないけど身につけたりなんて出来なさそうです(^_^;)
    顔料として。。でもそんなの大丈夫なのかなと思ったらやっぱりここでも毒性は問題だ、と。
    ただ毒や薬としては無機物・鉱物である、劣化等の点でかなり扱いは楽なのですね。
    それにしても化学式の組成・成分がヒ素に硫黄というのも、なんというか物騒な感じです(^◇^;)扱いを間違えたら硫化水素とか発生しそうですし。

    • ありがとうございます♪
      触ったことがないのですが、爪で引っ掻いても傷がつくような鉱物ですね。
      だから昔から使いやすかったのでしょうね。
      毒生成にも顔料にも薬にも。
      薬と思って飲みすぎて体を壊したり命を落としたりした人が大勢いたようにしか思えません。
      しかも成分がわかってからもお酒に入れて飲んじゃうとかってスカイダイビングするような気持ちですかね?
      ちなみに鶏冠石が発見されるところは火山や硫化水素の濃い温泉地です。
      鶏冠石の赤が曼珠沙華の赤に似ているように見えて薬にも毒にもなることに納得してしまいます。

  4. 顔料としても安定のオレンジ色ですが、非常に毒性が強くて天然顔料としての「鶏冠石」はほとんど使われてないとの事。鶏冠石入りのお酒は、毒入り☠️酒を飲む感じですよねー虫除けや除菌で使うのがせいぜいですかね?(病気予防に部屋に撒いてもニンニク臭が漂うのは、いただけない?)

    • ありがとうございます♪
      昔ならまだしも、成分がわかってもなおお酒に入れるって恐ろしい発想ですね。
      もの凄い適量なら、デトックスだったのかもしれませんが、リスクが高すぎます。
      ニンニク臭のお部屋も嫌ですね(笑)

  5. 鶏冠石、鶏のトサカは、赤色が多いので、赤い鶏冠石だと、形も色もトサカに似ていますね。
    へき開は良好、ということは、完全ということでよろしいでしょうか?
    ルビーとは少し色あいが違うけど、ルビーサルファーともいうのですね。
    昔は色々な使われ方をしていましたが、現在の用途は主に観賞用でしょうか?

    • ありがとうございます♪
      トサカに似てますね。
      毒繋がりで曼珠沙華にも似ているような気がします。笑
      劈開の良好は完全でいいのでしょうね。
      脆くて崩れやすいようです。
      ルビーというのは赤という意味もあるので「赤い硫黄」という意味だったかもしれないですね。
      今は顔料にも花火にも使われないけれど、ヒ素は作られているようです。
      ヒ素工業用品の原料となります。

  6. ヒ素がニンニク臭というもの鉱物が臭いを放つのも知り驚きました。
    毒物が花の香りなどでなくて香水などに身につける物に利用されずに良かったです。

    • ありがとうございます♪
      以前、上野の科博でやった毒展にありました。
      匂いで予防できそうですが、カレーなどに入るとわからないでしょうね。

  7. 毒薬にも解熱剤にもなる鉱石があるなんて驚きました。この石をほる坑夫さんは健康を害した事でしょう!
    この石をめぐって、数多くの悲劇が生まれたのでしょうね☠️

    • ありがとうございます♪
      鉱夫さんも中世ヨーロッパで殺された人も、顔料として使っていた画家も、、、
      そしてなぜかいまだにお酒に入れる人、、、
      恐ろしくも面白い石ですね。

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