中国の神話より

創世神話」とは人類・地球・生命・宇宙の起源を説明する物語のことです。

古事記」の中でも天地開闢の場面はフワッとしていて心で読むしかないのですが、他の国の神話の「創世神話」はどのようなものでしょうか。

幾つか紹介します。

日本の「創世神話」

地図でスッと頭に入る古事記と日本書紀」p17からお借りしました

日本の「創世神話」は「古事記」に記された「天地開闢」の場面です。

詳しくは「天地開闢」(世界)「天沼矛」 を見ていただきたいのですが、簡単に書くと

天と地が分かれて造化三神とよばれるアメノミナカヌシなど観念的な神が現れて隠れる。

その後イザナギイザナミを含む神世七代が現れ島が誕生する。

という流れです。

この記事では世界の創世神話を大別する5つの型を紹介し、その例を紹介します。

「創世神話」の5つの類型 日本は④

世界各地には数多くの創世神話が伝承されています。

それらは主に5つの型に大別することができます。

①宇宙卵型

卵から世界が生まれたというモデルです。

東南アジアやフィンランド、古代ギリシャのオルフェウス教の創世神話に見られます。

②潜水型

先に一面水浸しの世界があり、神や動物が水底の泥から世界を作るというモデルです。

ユーラシア北部から北アメリカに多く見られます。

③世界巨人型、死体化生型

神や巨人などの死体から、天体の運行などの自然現象や、食糧が生じたというモデルです。

中国、インド、アイスランドなど世界の広い範囲に見られます。

④世界両親型

神の両親から生まれてというモデルです。

イザナギとイザナミは兄妹という設定ですが、日本神話は世界両親型に含まれます。

⑤一神教型

造物神が原初の混沌から世界を創り出すというモデルです。

・プラトンが著した「ティマイオス」に登場する世界の創造者デミウルゴス

・ユダヤ教における唯一神のヤハウェ

などがあります。

①宇宙卵型の例

フィンランドのアラビア社のプレート

フィンランド神話

フィンランド神話は18世紀まで口伝によって継承された神話です。

フィン族は精霊を信仰し、原始宗教的な伝説を守っています。

フィンランド神話の創世

この世界は鳥の卵が破裂してできあがったものだとされている。

また空は卵の殻かテントのようで、北にある北極星まで届く大きな柱がそれを支えているのだと考えられていた。

フィンランド神話では鳥の存在が重要視されており、

・鳥が季節によって天の川とフィンランドを行き来している

・人が生まれる瞬間に鳥が魂を運んできて死の瞬間に運び去る

など、鳥が信仰の対象となっていました。

②潜水型の例

ナホバ族の聖地 モニュメントバレー (ユタ州からアリゾナ州にかけてのエリア)

北米インディアンのナバホ族に口伝で伝わる「ナバホ族の創世神話」があります。

ナホバ族の創世

この世界は霧や水に浮かぶ小さい島の大きさでとても狭く、真っ暗だった。

このダークワールドから、ナバホ族は現在の世界への脱出の旅を始める。

最初、女性は黒い雲で男性が白い雲でした。

そして空で雲が出会い人間が生まれたのですが壮大な自然との共生と生命の誕生がかなり具体的に書かれています。

③世界巨人型、死体化生型の例

女媧 (故宮博物院所蔵)

中国神話は主に漢民族に伝わるものを指します。

伝説や歴史や宗教の集合体で、口伝、寓話、儀式、戯曲、書物などの形で残されて、

長江文明、遼河文明、少数民族の神話も含まれています。

中国神話の創世

盤古(バンコ)が天地開闢の創世神とされています。

盤古は、混沌の中で生まれ

その後、身長が1日ごとに伸び、その成長と共に天地が分かれます。

別の伝説によれば、斧などで切り開いたという話もあります。

やがて盤古は死に、その死骸は山や海や川や太陽になりました。

人間は女媧(ジョカ)という女神が泥や黄土をこねて造ったのが始まりとされています。

④世界両親型の例

「ウラノスと踊る星々」(カール・フリードリッヒ・シンケル作)

日本のイザナギとイザナミのように「世界はひと組の男女から生まれた」とする型です。

日本の神話はギリシャ神話の影響を受けているという説があるように、似ている所があります。

ギリシャ神話の創世

カオスだった世界に大地の女神ガイア、冥界の神タルタロス、愛の神エロスが生まれます。

ガイアは天空の神ウラノスを生みます。

ガイアウラノスは親子ですが結ばれ

山や木・花、鳥や獣、星を産み出しました。

ガイアは海の神オケアノスや大地の神クロノス、豊穣の神レア、など12人のティタン神族を産みます。


しかしガイアが目が一つのキュクロプス族、100の手と50の頭を持つヘカトンケイル族を産むと
ウラノスはこれらの子供を嫌い、生まれるとすぐにタルタロス(冥界)に閉じ込めました。 

ガイアウラノスに腹を立て、息子のクロノスに斧を渡してウラノスの男根を切り落とさせて海に男根を投げ込みます。

この時、海にこぼれた精液からアフロディーテなど多くの神が生まれます。

日本神話はイザナギ・イザナミが誕生するまでに多くの観念的な神が誕生しますが、2人の男女が多くのものを造ったとするところは似ています。

また、一般的な夫婦ではなく「親子だけど結ばれる」ガイアとウラノスは「兄弟だけど創り出す」イザナギイザナミアマテラススサノオと共通した神秘性を感じます。

息子のキュクロプスヘカトンケイルを嫌うウラノスカグツチを殺したイザナギを連想させ、

精液から神が多くの神が生まれるというのはイザナミの排泄物からトヨウケビメなどの神が生まれたことに似ていますね。

⑤一神教型の例

システィーナ礼拝堂天井画の「光と闇の分離」(ミケランジェロ作)

イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の思想の基礎となっているのは「旧約聖書」と呼ばれる書物です。

イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の神は同じ一人の神ですが

呼び名がイスラム教の場合はアッラーユダヤ教はヤハウェキリスト教はゴッドになります。

旧約聖書の天地創造

  • 1日目 神は天と地をつくられた(つまり、宇宙と地球を最初に創造した)。暗闇がある中、神は光をつくり、昼と夜ができられた。
  • 2日目 神は空をつくられた。
  • 3日目 神は大地を作り、海が生まれ、地に植物を生えさせた。
  • 4日目 神は太陽と月と星をつくられた。
  • 5日目 神は魚と鳥をつくられた。
  • 6日目 神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくられた。
  • 7日目 神はお休みになった。

というようにお一人の神が7日間で万物をお造りになったとされています。

世界各地に創世神話があり、面白く作られていますね。

興味があるものはありましたか?

ここではあらすじの紹介になってしまったので、じっくりと読んでみると面白そうですね。

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コメント一覧
  1. この度の創世神話のお話は壮大なお話しですね
    世界には多くの陸地、人種、宗教は生存する中にて5つの説のみ伝承されている事に驚きます
    この小さな島国にも一つ。大陸であれば数百の説はありますものと思いました
    私はやはり世界両親型説は最も納得適います(その様にマインドコントロールされているのかも…)
    特に中国神話の創生はそのお国らしさを感じます。

    • ありがとうございます♪♪
      現代人が思う以上に古代から海外の本が流通していたようですね。
      創世神話以外にも「見るなのタブー」や「アメノワカヒコ」などギリシャ神話に影響を受けていると言われる場面があります。
      多くの伝承があっても5つに類型されるというのは面白いですね。
      もちろん伝承というのは口伝が多いので、途絶えてしまったり、今も小さな部族に伝わる伝承はあるのかもしれません。
      でも人間が考え得ることがだいたい5つのパターンなのかもしれません。
      地域を考えると、創世神話は地形や気候が大きく影響しているように思えます。
      日本は小さな島がたくさんあるので「矛を使ってかき混ぜて点点と垂らした」という発想は腑に落ちます。
      中国やインドが巨人型というのも納得感がありますね。
      中国神話の盤古などは自然現象も作ってしまったのですから、雄大そのものです。

  2. ギリシャ神話とも似ている日本のイザナギ・イザナミ神話にやはり馴染みがあります。世界両親型説と分類されるのですね。中国神話の世界巨人型、死体化生型の創世も興味深いです。女神が人間を造ったのですね。一神教型はいかにもですね〜イスラム教徒のバングラデシュ人と話していると日本人の様な多神教⁈は理解できないそうです。

    • ありがとうございます♪
      バングラデシュ人には八百万の神は理解できないでしょうね。
      木のような植物や蛙まで神になってしまう、、、なんでもありな日本人はクリスマスを祝いお寺にもお参りする節操がない国に見えるでしょう。
      神話ができた頃は自分の土地が世界の全てだったと思っていたでしょうから、地形や気候の影響が大きいように思えます。
      インドや中国は泥を矛でかき混ぜるだけでは作れないでしょうから、巨人の力が必要そうですね。

  3. 世界の創生神話を比べてみることは、なかなかなくて、有り難かったです。

    宇宙卵型は、卵の中から、潜水型は、人間が旅先で見つける、世界巨人型中国版、世界両親型日本盤は神から、一神教型は神が造られたのですね。
    人間がいつ作られたかも考えると面白いです。
    卵型わからず。潜水型、創世の前。巨人型、両親型、一神教型、創世の後。
    日本神話では、世界は、ひと組の男女から『生まれた』と言うよりも、イザナギとイザナミが、かき混ぜて『お造りになった』という感じがしますが、やはり、ひと組の男女から、『生まれた』なのでしょうか?
    また、日本神話では、人間は創世後の、いつ作られたのでしょうか?

    • ありがとうございます♪
      殆どの神話は口伝なので、いつ頃からあったのかとか誰が作ったのかはわかりません。
      また、途中で話が変わってしまっている物も多いでしょう。
      イザナギとイザナミが造ったのは国と神なんですよね。
      国造りと神造りを行ったと古事記には書かれています。
      ニニギがイワナガヒメとの結婚を拒否するまでは神々は永遠に生きていたのです。
      はっきりと人間が出てくるのは天孫降臨の場面にアメノコヤネ(中臣の祖)などと出てくるところだと思います。
      でもこれは古事記を編纂させた立役者の1人、藤原不比等の意向が反映されていると思われますね。
      ざっくり言えば日本人はみんな神の子孫ということになります。

  4. 国の成り立ちな人間っぽい神様がいてギリシャ神話と日本の神話に共通点がたくさんあることで同じ分野分けされていて興味深かったです。

    • ありがとうございます♪♪
      古事記編纂の時期にはギリシャ神話を読んでいた日本人がいたのでしょうね。
      だからか?ギリシャローマ神話などはとてもスーッと入ってくるような気がします。

  5. はるさん☘️ありがとうございます。とても興味深いです。いつも素敵な情報楽しませてもらい、有り難いです✨

    • ありがとうございます♪
      楽しんでいただけて嬉しいです!
      コメントありがとうございます。これからの励みになります。

  6. 5つのパターン、どの地域国宗教での神話がそれにあたるか、とてもわかりやすかったです。ありがとうございます。
    日本のが中国大陸や朝鮮半島から伝わったような形では無く、むしろギリシャ神話に近いということが、とても興味深いです。
    観念〜謎の組み合わせ〜男女ペア、あと身体の一部や出たもの・排泄されたものから新たな神が生まれたりといった形、や順序に
    とても共通点が多い、といったことも、すごく似通っているような。決して近くはない(むしろ地球の裏側ぐらい離れている?)のにこれだけ共通しているのは本当に不思議ですね。

    「世界は7日間かけて作られた」のが1週間が7日、7が一つのサイクル、といった考え方の元なんですよね。
    タロットカードを展開していくめくっていくときって、7枚目をとること・とる人が多いけれど、
    「なんで7枚目なのか?」ということへの明確な説明って無かったりしますね。この問い・疑問への答えは
    「7が一つのサイクルだから」あたりでしょうか。

    • ありがとうございます♪
      地域によっていろいろな神話があるけれど、口伝によって伝わる伝承をまとめる人がいたら残るし、いなければ残らない、、。
      古事記の編纂を命じた天武天皇は偉大ですね。
      天地開闢という壮大なファンタジーを創るとなると、5つくらいに大別されるのでしょうか。
      今回、まとめてみて地形が大きく関係するように思いました。
      モニュメントバレーのようなところに住んでいる民族が矛でかき混ぜて、、、という発想にはならないでしょうし、逆も然りです。
      (私は古事記の編纂者はギリシャローマ神話を読んでいたと思います。)
      インドや中国の巨人も納得感がありますね。
      7日で、、、という方が私はむしろ受け入れ難いですね。笑
      タロットをやるようになってキリスト教を少し学びましたが一神教の精神的な部分は腑に落ちきれていません。

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