

目次
これまでのあらすじ
地上を治めるために降臨した「ニニギ(邇邇芸)」は「コノハナサクヤヒメ(木花之佐久夜比売)」と出会い、お互いに一目ぼれをしました。「コノハナサクヤヒメ」の父親である「オオヤマツミ(大山津見)」に結婚の許しをもらいに使者を送ると、許してくれたものの、姉「イワナガヒメ(石長比売)」も添えられてきました。
『日本神話タロット』鏡ノ肆 「ニニギとコノハナサクヤの結納」
鏡ノ肆(カップ4)カードの意味
・正位置
閉鎖的、安定、スランプ、現状維持
・逆位置
変化、展望、予期せぬチャンス
『日本神話タロット 極参』
鏡ノ肆
「結納」解説文(写し)

しかし二人の娘を差し出すには理由がありました。
コノハナサクヤと結婚すれば桜が咲くように栄華を極めますが、散るのも早いため短命になってしまうために、イワナガヒメも共に連れ添わせようとしたのです。
参考記事
「古事記」におけるこの場面
「イワナガヒメ」は醜かったので「ニニギ」は恐れをなして送りかえし、妹の「コノハナサクヤヒメ」だけを止めて一夜の契りを交わしました。一方「オオヤマツミ」は「イワナガヒメ」が送り返されたことを恥入り、こう言いました。

オオヤマツミ
私が娘二人を差し上げたのはゆえあってのことです。
まず「イワナガヒメ」を差し上げたのは天津神の御子の命が、雪が降ろうが風が吹こうが巌のようにいつまでも揺るがないようにと考えたからです。
「コノハナサクヤヒメ」を差し上げたのは木の花が華やかに咲くように栄えてください、とウケイをしながらなのです。
しかし「イワナガヒメ」は返されてしまいました。
だから天津神の御子の命は、木の花のように儚いものとなることでしょう。
まず「イワナガヒメ」を差し上げたのは天津神の御子の命が、雪が降ろうが風が吹こうが巌のようにいつまでも揺るがないようにと考えたからです。
「コノハナサクヤヒメ」を差し上げたのは木の花が華やかに咲くように栄えてください、とウケイをしながらなのです。
しかし「イワナガヒメ」は返されてしまいました。
だから天津神の御子の命は、木の花のように儚いものとなることでしょう。
ーオオヤマツミの和歌ー
故(カレ)天つ神の御子の御壽(ミイノチ)は
木の花のあまひのみまさむ
意味:あなたの寿命は木の花のように儚い物となるでしょう。
故(カレ)天つ神の御子の御壽(ミイノチ)は
木の花のあまひのみまさむ
意味:あなたの寿命は木の花のように儚い物となるでしょう。
「イワナガヒメ」を「日本神話」に登場させた理由
わざわざ「イワナガヒメ」を登場させたのには理由があります。(神武天皇のひいお爺さんである「ニニギ」を最低だと言いたいのではないでしょう。)
神には基本的に寿命はありません。
「イザナミ」や「オオゲツヒメ」などのように時折「死」を迎える神がいるので「神=不死」ではないようですが、病気になったり寿命を迎えたりすることは考えにくいです。
しかし地上に降臨し、やがて人の世に移行する以上、命に限りが生じてしまいます。
天孫降臨から神武天皇誕生までは神の時代から天皇の時代への移行期です。
その間に、永遠の命(神)から、限りある命(天皇)へと変質する存在として、寿命の起源神話を作る必要がありました。
そこで登場させたのが「イワナガヒメ」であり、拒絶されるために容姿が醜いことにする必要があったのでしょう。
はるさん的補足
バナナ型神話
バナナ型神話とは、生命は永遠のでないことの理由づけとして世界各地にある神話です。アダムとイブが木の実を食べて楽園を追放になった話が有名ですね。
参考記事 日本神話は「天津神の子孫である天皇も死を避けられないのだ」ということを「ニニギ」が面食いだったせいにしました。
美と死(儚さ)が隣合わせであるという日本の「バナナ型神話」には「もののあはれ」の原点が宿っていると言われています。
これまでに完成している記事
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