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『日本神話タロット』勾玉ノ女王 「スセリヒメの憂鬱」
これまでのあらすじ「スサノオ」の娘「スセリヒメ」は根の堅洲国に「スサノオ」を頼って逃げてきた「オオクニヌシ」と恋に落ちます。
そして「スサノオ」の試練に耐え抜いた「オオクニヌシ」と出雲に駆け落ちしました。
しかし「オオクニヌシ」は「ヤガミヒメ」や「ヌナカワヒメ」とも結婚してしまい「スセリヒメ」は嫉妬します。
『日本神話タロット』勾玉ノ女王 「スセリヒメの憂鬱」
カードの意味
・正位置
管理能力、裕福、計画性、社会貢献、奉仕、家庭的
・逆位置
悲観的、不誠実、疑心暗鬼、自立心の欠如
『日本神話タロット 極参』
勾玉ノ女性
「スセリヒメの憂鬱」の解説文(写し)
試練を乗り越えて結婚したオオクニヌシは浮気性でした。オオクニヌシはスセリヒメを本妻にする前にヤガミヒメとも結婚していました。
さらにオオクニヌシはヌナカワヒメをはじめ、多くの女神の元に妻問いに行きました。
流石に怒ったスセリヒメからオオクニヌシは逃げようとしましたが、スセリヒメは引き留めるために歌を歌いオオクニヌシを出雲大社に留まらせます。
参考記事
『古事記』におけるこの場面
嫉妬深い「スセリヒメ」に「オオクニヌシ」は困惑して大和の国へ出陣することにしました。旅支度をして 最後に念入りに衣装選びをします。
黒い衣装を着て、次にカワセミのような青い服を着て、胸元を見て手をバタバタさせてみて
「似合わないなあ」
と言い、
藍色に染めた衣装を着て胸元を見て手をバタバタさせてみて
「これは似合う。これを着て行こう。」
と、ようやく服が決まりまさに馬に乗ろうとした時「スセリヒメ」がお酒を持って現れました。
オオクニヌシ
愛しい妻よ
私や従者が立ち去ってもあなたは泣かないと言っていたけれど、きっとすすきのようにないてしまうでしょう。
あなたの悲しみは朝の雨の霧のように立ち込めるでしょう。
私や従者が立ち去ってもあなたは泣かないと言っていたけれど、きっとすすきのようにないてしまうでしょう。
あなたの悲しみは朝の雨の霧のように立ち込めるでしょう。
「スセリヒメ」がお酒を持って来て夫のそばに寄り添い歌って言うには
スセリヒメ
あなたは男ですから島の岬、港ごとに妻がいるんでしょうね。
でも私は女ですから貴方以外に夫はいません。
柔らかい寝具の上で
淡雪にような白い胸、白い腕を愛撫し絡み合い
わたしの手を枕にして
足を伸ばしてお休みください。
さあお酒を飲んでください。
でも私は女ですから貴方以外に夫はいません。
柔らかい寝具の上で
淡雪にような白い胸、白い腕を愛撫し絡み合い
わたしの手を枕にして
足を伸ばしてお休みください。
さあお酒を飲んでください。
そして今に至るまで仲良く宮に鎮座しています。
この物語を神語(カミガタリ)といいます。
旅支度を念入りにするのは旅先で妻問いをするためでしょう。
それでも「スセリヒメ」を見ると優しい言葉をかけずにいられない性格なんでしょうね。
それでも「スセリヒメ」を見ると優しい言葉をかけずにいられない性格なんでしょうね。
はるさん的補足
その後の「スセリヒメ」
この後「古事記」には「スセリヒメ」の記述はありません。次に出てくる系譜では「オオクニヌシ」の妻は宗像三神の一柱「タキリビメ」となっていて「スセリヒメ」は登場しません。
このことについて幾つかの説があります。
・「スサノオ」が高天原を追放された時に天津神から国津神に降格になったので「スセリヒメ」も国津神である。
「オオクニヌシ」も国津神ではあるが、葦原中国を作った神の妻として「スセリヒメ」は分不相応だとされ、離縁するよう強制された。
・根の堅洲国で「オオクニヌシ」を助けた時に呪術を使ったことから「スセリヒメ」は巫女であったと思われる。
そして嫉妬深く恐めの性格だったため子供も産まれなかった。
「オオクニヌシ」も国津神ではあるが、葦原中国を作った神の妻として「スセリヒメ」は分不相応だとされ、離縁するよう強制された。
・根の堅洲国で「オオクニヌシ」を助けた時に呪術を使ったことから「スセリヒメ」は巫女であったと思われる。
そして嫉妬深く恐めの性格だったため子供も産まれなかった。
いずれにしても出雲大社での「スセリヒメ」の扱いは少し気の毒です。
上の境内見取り図で「スセリヒメ」が祀られているのは本殿の右にある「御向社」
すぐ隣には「オオクニヌシ」が最初に殺された時に助けた「キサガイヒメ・ウムガイヒメ」を祀る「天前社」がありますが、同じ大きさです。
「オオクニヌシ」が祀られる本殿を挟んで「タキリビメ」を祀る「筑紫社」があります。
本殿の「オオクニヌシ」は西に向いて鎮座しており、西に祀られているのは「タキリビメ」で「スセリヒメ」は背を向けられています。
西を向いているのは
・神々が集まった稲佐の浜が西にあるから
・神仏習合の時代に仏教では西が重要だったから
・神仏習合の時代に仏教では西が重要だったから
「オオクニヌシは嫉妬深く怖いスセリヒメよりも、優しく美しかったタキリビメを見ていたいのだろう」
などと言う人もいるようです。
古事記の他の記事
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上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)
中巻(神武天皇から応神天皇)
下巻(仁徳天皇から推古天皇)
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