「鏡ノ漆」 カップの7

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これまでのあらすじ

アマテラス(天照大御神)」らの命令で地上に降臨した「ニニギ(邇邇芸)」は
コノハナサクヤヒメ(木花佐久夜比売)」と出会い恋に落ちます。

コノハナサクヤヒメ」の父「オオヤマツミ(大山津見)」には姉の「イワナガヒメ(石長比売)も嫁にもらって欲しいと言われますが拒否し
コノハナサクヤヒメ」とだけ一夜を共にしました。

『日本神話タロット 極参』
 鏡ノ漆 (カップの7)

鏡ノ漆 (カップの7)の意味

正位置
戸惑い、欲望、幻想、白昼夢、無気力

逆位置
願望の現実化、発展的、援助を受ける

鏡ノ漆 (カップの7)
の解説文(写し)

たった一度の契りで身篭った「コノハナノサクヤヒメ」に、遠征から帰ってきた「ニニギ」は自分の子ではなく、

国津神(クニツカミ)の子だと言い放ちます。

それ(お腹の子が「ニニギ」の子であること)を証明するために、「コノハナノサクヤヒメ」は


天津神(アマツカミ)であるあなたの子なら、何があっても無事に産めるはず


と、産屋に火を放ち、その中で出産をします。

生まれた3人の子供に、「ホデリ」「ホスセリ」「ホオリ」と名付けました。

参考記事

「古事記」におけるこの場面

コノハナサクヤヒメ」は「ニニギ」の前に出て

コノハナサクヤ
私は身籠もりました。
天津神の子ですから、こっそり産むべきではありません。
どうしたらいいですか。

ニニギ
サクヤヒメよ。
たった一回の交わりで身籠もったというのか。
私の子ではあるまい。
国津神の子だろう。

コノハナサクヤ
もし私が身籠った子が国津神の子なら無事産まれてこないでしょう。
でももし天津神の御子なら無事生まれるでしょう。

と言い、扉の無い広い産殿を造り、その中に入って土で隙間を塗りふさぎ、いざ生まれようとした時に火を放ちました。

この火が燃え盛る時に無事生まれた子たちは
ホデリ(火照命)(海幸)
ホスセリ(火須勢理命)
ホオリ(火遠理命)(山幸)」またの名を「アマツヒコヒコホホデミ(天津日高日子穂穂手見命)
といいます。

この場面のポイント「天津神」と「国津神」

天津神」と「国津神」について簡単に説明すると

・「天津神」は高天原で生まれた神

・「国津神」は地上で生まれた神

天津神」がずっと格上です

オオヤマツミ」と「アマテラス」は共に父親は「イザナギ(伊邪那伎)」ですが、

オオヤマツミ」は国津神

「アマテラス」は天津神(アマツカミ)です。

したがって
コノハナノサクヤヒメ」は国津神
ニニギ」は天津神となりますですので、
格が違います。

系譜を見ていただくと、ごく近しい親戚同士の結婚のようですが
アマテラスオオミカミ」や「ニニギ」は天津神

オオヤマツミ」や「コノハナノサクヤヒメ」「イワナガヒメ」は国津神
なのです

つまり、ニニギ」からすると格下の「コノハナノサクヤヒメ」との結婚。

しかも「ニニギ」は生まれたばかりで、おそらく教育も受けずに地上に降臨させられました。

参考記事

イワナガヒメ」「コノハナノサクヤヒメ」ともに酷い扱われ方をされたのはそのような背景があったからだと思われます

はるさん的補足
火中出産が示すこと

「日本開闢由来記」より「火中出産」

コノハナノサクヤヒメ」は「ニニギ」に、
生まれて来る子が天津神(「ニニギ」の子)であることを証明しようとして産殿で火中出産をし、無事証明してみせました。

この頃、出産の時に、産殿という出産用の小屋を建てていたようです

(宮崎県には、その産殿の跡地(無戸室 ウツムロ)があります)

火中出産をしたということは、単に「ニニギ」の子であるという証明(「天津神」の子)をしただけでなく

火の中で産まれてきた子供の神性を表すためと言われています。

3番目に生まれてきた子
火遠理(ホオリ)」は山幸彦(初代天皇である神武の祖父)になります。

つまり火中出産は

天皇は確かに「アマテラス」の血筋であることを証明し
天津神には神性(火を制する力)がある

ことを語っているのです。

古事記の他の記事

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上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇)

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コメント一覧
  1. みゆき より:

    神世七代って柱なんですね…人柱ではなく、神柱⁉️ですね。それにしても「コノハナノサクヤヒメ」火中出産だなんて、カッコ良すぎます!ハンパない覚悟の下、産まれた3人の子に火を制する力があることは、ホント納得できますね

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます♪
      神様は柱と数えるようです
      ひとはしら、ふたはしら、、、
      神が亡くなると、柱を建てていたそうです

      コノハナノサクヤヒメ、カッコいいですよね!
      コノハナのおかげで、天津神の遺伝子も守られ、火を制する神となりました

  2. さゆ より:

    アメノオシホミミの夫、つまり、ニニギの父も、名はわからないけど、天津神ですね。
    ちょっと疑問がわいてきました。
    天下り=降臨は、やはり、位下の神が住んでいるので、したくないことでしょうか?
    また、天津神は、地上に降りたあと、地上にずっと住むのでしょうか?

    もし出来たらですが、この記事に出てくる神々の系譜も、作ってくださると、とても嬉しいです。

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます
      アメノオシホミミは天津神です
      天下りをしたいかどうかは、その性格によりそうですよね
      でも、地上に降りるというのは、格下の場所だし、しかも戦いをすることなので、嫌がる神は多かったのではないでしょうか

    • harusan0112 より:

      系譜追加しました!
      確かにあったほうがわかりやすそうです
      ありがとうございます!
      また気が付いたことがあれば、どしどしお願いします

  3. まいこ より:

    神様でも疑り深い男に弱さが売り女が意地を張り無理して火の中で出産するなんて産まれた子どもは優秀だった。
    情報のある今と違って昔の人はどうゆう気持ちでこの話を受け止めてていたこれを伝え続けるのかしら?
    その人の立場で受け取り方は差が出ます。

    家系図で出身がわかりなんとか理解出来ました。
    ありがとうございます。

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます♪
      DNA 鑑定もなかった頃、こういう酷い話は多かったんでしょうね
      しかも格差婚ですから、ニニギを責める人はあまりいなかったかもしれませんね
      でも、私の教授は嬉しそうに「酷い男です」と強調してました。笑
      コノハナノサクヤヒメが立派なので、全国で浅間神社となって慕われているのは嬉しいですね
      家系図、毎回付けるようにします

  4. 才色健躾 より:

    やはりニニギ様は…人でなし!と叱りたいです。
    教育も受けず地上へと降ろされたのは試練を与える為なのでしょうね
    しかし言葉に毒はあります。
    カップ7の意味は全てに当てはまりますね。

    • harusan0112 より:

      ニニギ様、人でなしですが(笑)教育も受けてなかったので、、、随行した神々にも責任があると思いますが、何をやっていたんだろう。
      タロットカード、言いたいことを上手く代弁してくれますよね。

  5. さゆ より:

    質問ですが、ホオリ、ホスセリ、ホデリなどは、地上で生まれたと思うのですが、天津神かしら?
    宮崎県西都市には、「記紀の道」というのがあって、無戸室も含めて、コノハナサクヤヒメとニニギにまつわる神社や、湧き水などの伝承地が4.8Km、約1時間の道筋にあるようです。古代に思いを馳せながら、ぶらぶらと街道を行くのもいいなと思います。

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます❗️❗️
      素晴らしい指摘なんですが、そうなんです。
      アマテラスの天孫ニニギの直系ということで、天津神になるんです。
      記紀の道、YouTubeで見ましたが、一度行ってみたいですね。
      高千穂は遠そうですが、記紀の道なら、、、
      と私も思ってしまいました。

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