
隕石は惑星間空間に存在する個体物質が地球などの惑星の表面に落下してきた物体のことです。
隕石は金属鉄と珪酸塩鉱物の比率で主に
・鉄隕石
・石鉄隕石
・石質隕石 (コンドライト・エコンドライト)
の3つに分類されます。
地球に落下した数の割合は鉄隕石は5%ほどと言われていますが、発見された割合は半数近いとされています。(理由は下の方で説明します)
ちなみにパラサイト・ペリドットは石鉄隕石に属します。
隕石について

この表は内田洋行教育研究所さんのページからお借りしました。
隕石は石が多いか金属鉄が多いかによって3つに分類されます。
金属鉄とは
鉄とニッケルの合金のことです
・鉄隕石
成分が主に金属鉄
全体の約5%
・石鉄隕石
成分が金属鉄、カンラン石(宝石質のペリドットを含む)、輝石類などの珪酸塩鉱物
全体の1〜2%
・石質隕石 (コンドライト)
カンラン石、輝石類、長石類などの珪酸塩鉱物と金属鉄
全体の80%
・石質隕石 (エコンドライト)
カンラン石、輝石類、長石類などの珪酸塩鉱物
全体の10%
隕石はできた年代が地球上の岩石(日本の岩石は数万~数億年前、大陸では数億~30億年前のものが多い)と比べ非常に古く40~46億年前のものが一般的です。

44億年前から、地球に存在していたそうです
上の表のように、46億年前に太陽系が誕生したころ微惑星(太陽系のちり)が衝突してコンドライトが生まれます。
その後コンドライトが惑星などの天体と衝突や破壊をします。
惑星の核は金属鉄、外核のマントル部分が珪酸塩鉱物が多いことから
・衝突と破壊が核で行われると鉄隕石
・衝突と破壊が核とマントルの境で行われると石鉄隕石
・衝突と破壊がマントルで行われるとエコンドライト
になります。
鉄隕石について

鉄隕石の成分
鉄隕石とは鉄とニッケル合金からなる隕石です。
隕鉄ともいいます。
・ニッケルの割合が多いテーナイト
・ニッケルの割合が少ないカマサイト
に分類されます。
鉄隕石の構造的分類
鉄隕石は構造により
・ヘキサヘドライト…ニッケル比が少ない
・オクタヘドライト…テーナイトとカマサイトの混合物
・アタキサイト…ニッケル比は多い
に分類されます。
構造の違いはニッケル含有比を反映します。
最も多いのはオクタヘドライトで、ウィドマンシュテッテン構造がみられることで有名です。
ウィドマンシュテッテン構造について

ウィドマンシュテッテン構造とはオクタヘドライトにおいてみられる特有の構造です。
オーストリアの科学者ベッカー・ウィドマンシュテッテン氏が1808年に発見 (実はもっと前に発見した人がいたことが判明した) したことから命名されました。
オクタヘドライトは6〜14%程度のニッケルを含む金属鉄で
隕鉄を生成する過程で数万年に1℃というゆっくりした速さで冷却されることでニッケルが分離。
分離したニッケル結晶の特徴的な形状がウィドマンシュテッテン構造となります。
現在は人工的にはウィドマンシュテッテン構造を作ることができません。
ウィドマンシュテッテン構造をもつ鉄隕石を切断してもウィドマンシュテッテンの形状が観察可能となります。
ウィドマンシュテッテン構造を持つ鉄隕石を用いて鉄製品を製造した場合、形が歪むものの構造自体は残されていることが多く、
鍛冶屋における通常の作業においては完全に構造をなくすことは難しいとされています。

有名な鉄隕石 ギベオン隕鉄

ギベオン隕鉄は1938年ナミビア共和国のギベオンという町で発見された主に鉄とニッケルからなる鉄隕石です。
約4億5千年前に地球に落下したと考えられています。
名前は発見された地名に由来しています。
もちろんウィドマンシュテッテン構造が見られます。
美しいのでブランド化しています。
鉄隕石の硬度
モース硬度 9
💎参考記事
鉄隕石の光沢
金属光沢
💎参考記事
鉄隕石が発見されやすい理由
鉄隕石は地球上に落ちた隕石の約5%ほどですが、発見された隕石の約半分が鉄隕石と言われています。
なぜでしょうか?
それは鉄隕石が地球の岩石とは見かけが非常に違っていて、また落下後に風化されにくく発見されやすいからです。
日本に落ちた最大の鉄隕石は行方不明
日本国内で確認された隕石は50件ほどです。
最大といわれているのは1817年の12月29日の午後2時ごろ、甲州街道沿いにある宿場町だった今の八王子市とその周辺の日野市や多摩市に、雷のような轟音と共に隕石の雨が降り注いだと当時の文献に残っていて「八王子隕石」と呼ばれていますが実物は行方不明です。
当時は火山による物だと結論づけられてしまったようであまり調査が行われることなく紛れてしまったようです。
鉄隕石は
・普通の石よりずっしりしている
・破断面に赤サビが付いていることが多い
・磁石にくっつく物が多い
などの特徴があります。
興味があったら磁石を持ってお出かけしてみるのも楽しそうですね!

鉄隕石の活用
人類は製鉄技術が確立する前には鉄を多く含む隕石を原料に鉄器を作っていたと考えられています。
有名な物を紹介します。
ツタンカーメンの墓から発見された短刀
ツタンカーメンの墓から発見された短刀が鉄隕石から作られたものだと証明されています。
ツタンカーメンは紀元前14世紀の王です。
その頃から鉄隕石が使われていたことに驚きます。

明治時代に作られた流星刀

明治時代に榎本武揚が鉄隕石から長刀2振り、短刀2振りを作らせ「流星刀」と名づけました。
榎本武揚はロシア大使としてサンプトペテルブルグにおもむいていた時期に、ロシア皇帝の秘宝の中に鉄隕石で作られた刀があることに感動し
いつか自身も鉄隕石を使用した刀を手にしたいと夢見ていたと言われています。
日本には隕石が多くないのですが、富山県上市川上流で22キロの鉄隕石が見つかりました。
鉄隕石は通常の鉄より柔らかいため製作に難儀しましたが、
鉄隕石70%に玉鋼30%を混ぜることによって「流星刀」が完成しました。
その後もう1振り作られました。
これらのうち、1振りは当時の皇太子(大正天皇)に献上され、1振りは戦時中に紛失、2振りはそれぞれ東京農業大学、富山市天文台(後に同市科学博物館が収蔵)に寄贈されました。
「最も刃紋の美しい刀」として代々榎本家に伝えられてきたものといわれる短刀1振りは2017年に榎本武揚のひ孫榎本 隆充氏によって榎本武揚ゆかりのある龍宮神社に奉納されました。

隕石に当たる確率
よく「隕石に当たるより確率が低い」などという表現を耳にします。
実際に研究調査した米テュレーン大学の地球科学教授スティーブン・A・ネルソン氏によると
人が一生の間に局地的な隕石、小惑星、彗星の衝突で死亡する確率は「160万分の1」だそうです。
ただ、地球全体に影響を与えるような巨大な小惑星または彗星の衝突で死ぬ確率は「7万5000分の1」としました。

・自動車事故に遭う確率は90分の1
・火事に遭う確率は250分の1
・竜巻は6万分の1
・落雷は13万5000分の1
雷の倍も高い確率です
地球には、白亜紀末に隕石が衝突し、恐竜など多くの生命が死亡したと考えられている過去があります。
直接当たらなくても、衝突で引き起こされた熱、放射能、太陽を覆い隠すほどのちりによって死ぬ可能性は高くなりますね。
私たちが宇宙の一部だと改めて認識されます。
鉄隕石の石言葉
・自分への信頼
・探求
・価値観の創造
・自己認識力
鉄隕石 誕生日石
鉄隕石は誕生日石にはなっておりません。
💎参考記事
鉄隕石の主な発見地
・南極🐧
・ナミビア🇳🇦
などで多く見つかっています。