(70)『古事記』「アメノウズメ」と「サルタビコ神」
「サルタビコ神」を祀る阿射加神社(三重県松阪市)
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これまでのあらすじ

アマテラス(天照大御神)」の天孫「ニニギ(邇邇芸)」は地上を統治するために、多くの神々と三種の神器と共に高千穂の地に降臨しました。

「アメノウズメ」と「サルタビコ神」

松阪市阿坂の位置
ニニギ」は「アメノウズメ(天宇受売命)」に
ニニギ
私を先導した「サルタビコ(猿田毘古大神)」は、その正体を明かしたお前が送ってやれ。
そしてお前はその神の名を継いで仕え奉るのだ。
と、おっしゃいました。

こうして「アメノウズメ」は「サルメ(猿女)」と呼ばれるようになりました。

一方、「サルタビコ神」は伊勢の阿邪訶(アザカ)にいる時に、漁をしていて比良夫貝(ヒラブガイ)(海の妖怪)に手を挟まれて海に沈んでしまいました。

それで

・海に沈んでいる時の名を底度久御霊(ソコドクミタマ)といい
・海水が泡立つ時の名を都夫多都御霊(ツブタツミタマ)といい
・泡が割れる時の音を阿和佐久御霊(アワサクミタマ)といいます。


ところで「アメノウズメ」は「サルタビコ神」を送って伊勢に辿り着くと 大小の魚を集めて

アメノウズメ
ニニギに仕えるか
と聞きました。
魚たちは
魚たち
お仕えします
と答えましたがナマコは何も答えませんでした。

怒った「アメノウズメ」はナマコの口を小刀で裂いてしまいました。

それで今にいたるまで、ナマコの口は避けているのです。

このようなわけで志摩から初物の供え物が献上される時には、猿女君に下されるようになりました。
ナマコ

「サルタビコ神」と「アメノウズメ」の関係

小刀でナマコの口を裂く「アメノウズメ」とそれをうかがう「サルタビコ神
サルタビコ神」は先導役なのですが、それを可能にしたのは「アメノウズメ」が名前を聞き出す大役を果たしたことによるものでした。

アメノウズメ」は「天の岩戸開き」の神事にも「アマテラス」に岩を開かせるために重要な働きをしました。

そして今回は返事をしないナマコの口を裂きました。

つまり、「アメノウズメ」は閉じている物や塞がっている物を開ける役割があるようです。

一方「サルタビコ神」は天と地の境界線に現れ、高天原と葦原中国をつなぐ役割をしました。

そしてこの場面で、伊勢の阿邪訶(アザカ)にいる時に、漁をしていて比良夫貝(ヒラブガイ)に手を挟まれて海に沈んでしまいました。

今度は地上と海をつなげたと考えられます。

つまり「サルタビコ神」は天と地と海をつなぐ重要な神で、それを可能にしたのは「アメノウズメ」の開く能力との連動による物だと言えるでしょう。

サルタビコ神」と「アメノウズメ」は一説によると結婚したと言われ、伊勢「猿田彦神社」内には「アメノウズメ」を祀る「佐瑠女神社」があり、同じ所で祀られています。

はるさん的補足 「アメノウズメ」日本書紀との表現の違い

アメノウズメ」は「サルタビコ神に乳房を見せて名前を聞き出した女神」だと思ってる方がいっらっしゃいますが、それは「日本書紀」にある記述です。

古事記」では「サルタビコ神」の前で肌も見せていません。

何故違うのでしょうか。

古事記」は天武天皇が「帝紀」と「旧辞」を定め、稗田阿礼に誦み習わせ、それを太安万侶が書写した物と言われています。

ですから稗田阿礼(ヒエダノアレ)の意向が強く反映されているでしょう。

稗田阿礼は「アメノウズメ」の子孫だと言われており、「日本書紀」よりも上品な「アメノウズメ」を描きたかったのかもしれませんね。

古事記の他の記事

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上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇)

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コメント一覧
  1. 才色健躾 より:

    この度はアメノウズメ様の残酷物語の様に思えました。
    しかしそうでは無いことに胸を撫で下ろします
    閉じているもの塞がっているものを開放する役目と云う事は
    自身の運勢や運気をも開いて頂ける神様なのですね
    次回、猿田彦神社を詣でました際は忘れず手を合せにゆきたいと思います。

    • harusan0112 より:

      アメノウズメは可愛らしさと度胸で世界を開いていける、まさにアイドル的存在だったんでしょうね。
      明るく踊って開運ですね!

  2. よしちゃん より:

    サルタヒコさんの最期って、思わず「ドジっ子か!」とかツッコんでしまいそうになる、なんとも言えないエピソードです。
    同じくサルタヒコさんをお祭りしている二見浦の二見興玉神社さんでは禊修行が行われているのですが(夏至に行うものはコロナで中断されているとか聞いたけど、毎月行われている分は再開された?)胸ぐらいの高さまで海に入り、大祓を唱え・・・の一連の手順の中に
    「ソコドクミタマの大神!えーい!!」と掛け声&気合と共に頭まで海に潜る。というのがあり、ソコドクミタマをツブタツミタマの大神・・・と替えていって計3回潜ります。
    https://youtu.be/D-u60e_sjZg

    サルメさんのナマコのお話は・・カーっとなっちゃった「・・・ぇぇ?」なエピソードなのかなと、長年思っていたのですが・・・すごく意味があることだったんですね。誤解していてスマンカッタという感じでした。
    さるめ神社さんには・・楽器や芸能等が「うまくなるお守り」というのがあって、自分も楽器のカバンにつけています

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます♪♪
      猿田彦さんは哀しい最期だと思いますが、海と陸をつなぐ役割をしたのですね。
      古事記だけをスラっと読んでしまうと、それ程出てくる場面が多くないのですが、大変重要な神なのですね。
      貴重なお写真ありがとうございます♪
      猿田彦さんをお参りというのは、溺れた時の疑似体験をしているのでしょうね。
      随分大勢で海に入るんですね。二見浦には何度か行っているのですが、夏至祭は知りませんでした。
      ウズメさんは本当に魅力的。
      みんなを解放してくれるんですね。
      いい夫婦です!

  3. さゆ より:

    アメノウズメは、踊りが上手なだけでなく、物怖じせず、事態を打開するのに適した資質をお持ちなのですね。
    仮に現代でも、優秀な働きをしたでしょうね。
    サルタビコは、ニニギ降臨のとき、伊勢から高千穂まで出向いて、先導後アメノウズメと故郷の伊勢まで戻ったのですね。出身、本拠地は伊勢なのですね。
    アメノウズメの子孫の猿女君の一部は稗田氏になり、稗田氏の本拠地は奈良ですね。
    それぞれ、地元に奉る神社があるのですね。行けたら行ってみたいです。

    • harusan0112 より:

      ウズメさんの能力はすごいです!
      全身から迸る魅力があるんでしょうね。
      現代でも平和をもたらしたり、バリバリ営業したりする肝っ玉母さんというイメージでしょうか。
      伊勢では猿田彦は元から伊勢の神だと言われていますが、そこはわからないですね。
      伊勢神宮が創建されてから猿田彦神社も創建されて、今回のストーリーができたと考えるのもありかなと思います。
      稗田阿礼はヤマト朝廷に仕えていたのでしょう。
      ただ、存在自体がはっきりしないのです。
      男性か女性かもわからない、謎の存在です。

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