(62)『古事記』「アマテラス」による地上統治計画⑤「タケミカヅチ」
「タケミカヅチ(建御雷)」鹿島神宮(茨城県)


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「アマテラス」による地上統治計画⑤「タケミカヅチ」

これまでのあらすじ

オオクニヌシ」が葦原中国(地上)を平定すると、「アマテラス」が
「地上は私の子供に統治させたいわ!」
と言い出します。

高天原から「ホヒ(天菩比神)」や「ワカヒコ(天若日子)」を送り、様子を窺わせますがいずれも失敗に終わりました。

「アマテラス」による地上統治計画⑤「タケミカヅチ」

この記事に出てくる主な神々の系譜

「古事記」におけるこの場面

アマテラス
今度はどの神を遣わせようかしら!
オモイカネ(思金神)」は多くの神々と相談して
オモイカネ
天の安河の川上の「天の石屋」にいる「アメノヲハバリ(天尾羽張神)」を遣わすといいでしょう。
と答えました。

ここの「天の石屋」は「アマテラス」がかつて籠ってしまった「天の岩戸」とは別の洞穴のような物だと思われます。
足元の悪い場所なので「鹿の神」である「アメノカク(天迦久神)」を遣わせ「アメノヲハバリ」に意向を尋ねさせました。

すると
アメノヲハバリ
恐れ多いことです。
お引き受けますが、私ではなく息子の「タケミカヅチ(建御雷)」に行かせましょう。
と答えて子を差し出しました。

アマテラス」は「タケミカヅチ」に「鳥と船の神」である「アマノトリフネ(天鳥船神)」を副えて地上(葦原中国に)遣わせました。

鹿島神宮の鹿園

「タケミカヅチ」とはどんな神か

「カグツチ」を父としている書物もあります

「タケミカヅチ」の出生

イザナギ」と「イザナミ」が神生みをしていた頃、「カグツチ(迦具土)」という「火の神」を生みます。

すると「イザナミ」は産道を火傷してしまい、亡くなってしまいました。

怒った「イザナギ」は「カグツチ」を「アメノヲハバリ(天尾羽張)」という刀で殺してしまいました。

その刀についた血から生まれたのが「タケミカヅチ」です。

このエピソードでは「アメノヲハバリ」が喋っていますが、あくまでですので「タケミカヅチ」の父は「カグツチ」だと書いている本もあります。

漢字から考える

古事記」での漢字表記は「建御雷」です。

・「」…勇猛な
・「」…神秘的な
・「」…厳(イカ)つい霊(雷)
つまり「勇猛で神秘的な雷の男」という意味です。

このことから「アマテラス」は官僚的な優男に見切りをつけ最強の神(真打ち)を登場させたと言えるでしょう。

恐らく「タケミカヅチ」は見た目から相手を威圧するような風貌っだと思われます。

しかし武力で制圧するのではなく、あくまでまずは話し合いでというのが基本的スタンスです。

「アマノトリフネ(天鳥船神)」とはどんな神か

たくさんいる「イザナギ」と「イザナミ」の子供の1柱です。

今の感覚だと、兄弟や親戚?に格差があるのは不思議に思われるかもしれませんが、神々の世では天と地ほどの格差があります。

上の系譜では「イザナギ単体から生まれた「アマテラス」が圧倒的に偉く、次いで「タケミカヅチ」、「アマノトリフネ」の順となります。

名前と漢字から考える

天鳥船神(アメノトリフネ)」は「鳥之石楠船神(トリノイハクスフネノカミ)」という別名を持っています。

鳥の神」であると同時に「船の神」でもあり
鳥の速さ、岩石の強さ、楠という良質な船材で表現される品格の良さ
を兼ね備えた神だと思われます。

アメノトリフネ」は「日本書紀」には登場しません。

はるさん的補足
「ヤマト王朝」の東国進出

「タケミカヅチ」が鎮座する「鹿島神宮」(茨城県)


タケミカヅチ」は元々茨城県香島で祀られていた神で「香島大神」と呼ばれていました。

その「タケミカヅチ」が何故、重要かつカッコいい役割を与えられたのでしょうか。

アマテラス」などの天津神が「ヤマト王朝」だと考えると、「ヤマト王朝」の東国進出と関係があると言われています。

ヤマト王朝」は4世紀末ごろから東国に進出し始め、5世紀半ばには本格的に進出したと見られています。

その中で、現地の神と中央の神々を結びつけ、東国との融和を図ろうという試みがあったと思われます。

その際尽力したのが 中臣 氏です。

7世紀に中臣氏が鹿島の地を治めるようになり、中臣氏を通して「古事記」に取り入れられたとも考えられています。

古事記の他の記事

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上巻(天地開闢から海幸彦山幸彦)

中巻(神武天皇から応神天皇)

下巻(仁徳天皇から推古天皇)

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