(104)『古事記』垂仁天皇③言葉を発しないホムチワケ 白鳥とは
白鳥

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これまでのあらすじ

垂仁天皇の愛后「サホビメ(沙本毗売)」の兄

サホビコ(沙本毗古)」は謀反を計画します。

サホビメ」から計画を聞いた垂仁天皇は軍を率いて

サホビコ」を征伐に行きます。

妊娠していた「サホビメ」は「サホビコ」の砦に入り、

ホムチワケ」を出産し「サホビコ」と共に炎の中で亡くなりました。

「古事記」における「ホムチワケ」

サホビメ」が遺した「ホムチワケ」を垂仁天皇は愛情をかけ、一生懸命に育てます。

珍しい小舟を地方から取り寄せ、池に浮かべて一緒に乗り、遊んだりもしました。

舟遊びをさせたのは、舟を揺らして御子の魂を揺さぶり、活力を奮い起こすためだと言われています。

ところが「ホムチワケ」は髭が胸元に届くようになっても、話すことができませんでした。

母親「サボヒメ」が垂仁天皇を裏切った罪が息子に及んだのではないかと噂をされていたようです。

しかし、空高く飛び行く白鳥の声を聞いて初めて、何かを言いたそうにしました。

そこで垂仁天皇は「ヤマベノオオタカ(山辺大鶙)」という人物に、

その白鳥を獲りに行くよう命じました。

ヤマベノオオタカ」が白鳥を追いかけたルート 「オールカラー地図と写真でよくわかる!古事記」(西東社)p.131

ヤマベノオオタカ(山辺大鶙)」は白鳥を追いかけて紀伊国から播磨国に行き、

また因幡国に超えて行き、丹波国、但馬国に行き東の方に追い回り、

近江国に追っていきました。

そこから美濃国に渡り尾張国を通過して信濃国に越えて行きついに越国まで追って行き、

和那美(ワナミ)の港罠網(ワナアミ)を張り、白鳥を捕獲して都に行って献上しました。

そこで、その港を和那美の港というのです。

和那美が何処だかは、わかっていません。

垂仁天皇は「ホムチワケ」がその白鳥を見たら、何か言うのではないかとお思いになりましたが御子が何かを言うことはありませんでした。

ホムチワケ」のお話しは次回に続きます。

はるさん的補足 白鳥が表すもの

古事記」「日本書紀」「万葉集」には白鳥がたびたび登場します。

しかし、それはいわゆる白鳥=スワンではなく、白い鳥全般を指すようです。

白サギだったかも 友人撮影

鳥信仰

銅鐸や土器に鳥の絵がたくさん描かれていることや、古墳から鳥の埴輪が出土されていることから

弥生時代に「鳥信仰」は全国に広がったのではないかと言われています。

兵庫県池田古墳出土の水鳥形埴輪 (5世紀 古墳時代中期)

鳥は田畑を荒らす害虫から穀物を守る穀神であったり、

を海の彼方や、遠い空の向こうまで運んでくれる存在だとされていたようです。

白という色

古代、は特別な色とされてきました。

古事記」には鳥だけでなく、白鹿白猪白犬・白い石が登場します。

これらの物は天皇に献上または貢ぐような、貴重で神聖な存在とされてきました。

白鳥が表すもの

以上を踏まえると「古事記」において白鳥

身分の高い人物の御霊が宿る存在だと考えられていたと思われます。

この場面、垂仁天皇がその白鳥は(「ホムチワケ」の母)「サホビメ」の御霊を宿す存在だと信じていたので、

長い行程を追いかけさせたのだろうと推測されます。

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コメント一覧
  1. Yoshi より:

    火中出産というとコノハナサクヤヒメを思い出しますが、サホビメも火中出産されたんでした。無事だったコノハナサクヤに対してこちらは・・ですが
    奥さんに愛情面で裏切られるわその挙句こんな形で奥さんを亡くすわ、生まれてきた子供は口がきけない(呪われている)わで、垂仁天皇は本当に踏んだり蹴ったりですねまあ彼自身が4人の奥さんのうち美人の2人以外を返してしまった、という大概なことをやっているとしても
    それにしても飛ぶ鳥を追いかけていくとか、本当に大変だったでしょうね。「ボスの気まぐれ(?)に振り回されて本当に大変な思いをする部下」とても気の毒な気もしますが。
    というかヤマベノオオタカは実は鳥のことを見失ってしまっていて、適当な鳥を代わりにでっち上げて持ってきて、だからホムチワケはその鳥を見ても何も反応しなかったのかも

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます♪♪
      天皇の後継者の決め方に問題があったんでしょうと思います。
      サホビコがなってもおかしくないので、納得できなかったと言うのもあるのではないかな。
      ヤマベノオオタカはお名前からして鳥の神なのでしょうね。
      車でだってこのルートは追いかけられません!
      無茶な命令すぎです。
      新潟に行ったところで疲れ果て、似た鳥を捕まえたとしても仕方がないと思います。

  2. まいこ より:

    命を受けたヤマベノオオタカは予想以上に探すための旅をしていたのに驚きました。ありがたい神の言葉はそう簡単には聞けないものなのですね。
    白い動物シリーズ期待してます。

    • harusan0112 より:

      ありがとうございます♪♪
      白犬、かなり後ですが出てきますよ〜。
      息子には優しいけれど、家臣には無茶な命令をしますね。
      本当にお疲れ様です。

  3. さゆ より:

    白鳥を見て何か言いたそうになったホムチワケと、気品ある白鳥から、垂仁天皇がサホビメの化身だと考えたのはよくわかります。
    鳥を求めてのヤマベノオオタカの旅の努力が実らず、話すことができなくて残念でしたが、ホムチワケは垂仁天皇に大事に育てられたので良かったです。
    ヤマベノオオタカの旅で、旧国名の位置が確認できてすごくありがたいです。

    • harusan0112 より:

      垂仁天皇はホムチワケに優しいですよね。
      その割に家臣に対しては、、、おそらくヤマベノオオタカは鳥の神なのではないかと思うのです。少なくとも複数の人間の総称でしょうね。
      こんなに一生懸命追いかけたのに、言葉が出なかった時はさぞガッカリしたでしょう。
      地図で見るととんでもない距離だったことがわかりますよね。笑

  4. 才色健躾 より:

    白鳥を追いかけましたルートの岐阜県は位置としては各務ヶ原市です。
    その様な伝承は私の知る限りは聞き及ばないです
    もう少し上手へゆきますと郡上市白鳥は御座います。
    ”白”。天皇、高貴など貴重を示す意図は想像できますね。

    • harusan0112 より:

      古事記のお話しは地元に伝承されてないようですね。
      友人のご主人様は奈良出身の秀才なのですが、その方の高校の隣にある狭岡神社も、大神神社もご存知ありませんでした。

      なかなか簡単にお話しできるようにはなりません!

      東山魁夷の御射鹿池の絵にも白馬が描かれているからこそ、神聖な感じがしますよね。

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